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認知症、予防できるのか…9つのリスクに対処すれば「35%抑制」?

政府は、認知症対策の方向性や目標などを盛り込んだ初の「認知症大綱」の原案を有識者会議に示した。認知症の人との「共生」とともに、「予防」対策を強化したのが特徴だ。だが、そもそも認知症は予防できるのか。できるとすれば、何をすればいいのか。治療薬の研究開発の最新事情と併せて解説する。(編集委員 山口博弥、医療部 森井雄一)

予防が「発症先送り」という意味なら…

 「『予防』という言葉を『病気にかからないこと』という意味で使うなら、認知症は予防できません」

 桜美林大の鈴木隆雄・老年学総合研究所長はそう前置きしたうえで、言葉を続けた。「発症を先送りする、という意味なら、予防できる可能性はある」

 予防の効果を科学的に証明するには、「介入型研究」が欠かせない。

 たとえば、一定の集団をくじ引きでAとBの二つに分け、Aは特定の運動を定期的に続け、Bは運動をしない。数年後、Aの認知症発症率がBに比べて統計学的に意味のある差をもって低ければ、運動の予防効果が証明されたことになる。

 こうした介入型研究は実施が難しく、認知症発症の予防効果が証明された方法はまだないという。

認知症、予防できるのか…9つのリスクに対処すれば「35%抑制」?

読売新聞社

中年期に高血圧治せば発症2%減、高齢期に運動不足解消すれば3%減…

 一方、認知症になりやすいリスク(危険因子)を見つける「観察型研究」は多い。一定の集団を長期間観察し、認知症になった人とならなかった人の間で、生活習慣や他の病気、教育歴などがどう違うかを調べる。

 英医学誌「ランセット」は2017年、世界の複数の研究を解析し、予防できる可能性がある九つのリスクを発表した=イラスト=。中年期に高血圧を治せば認知症の発症を2%減らし、高齢期に運動不足を解消すれば3%、九つすべてのリスクをなくせば35%抑えられる可能性がある、という内容だ。

 また、発症予防ではなく、「認知機能の低下」の予防効果が示された介入型研究は国内外に数多い。国立長寿医療研究センター(愛知県)が、計算など頭の体操と全身運動を同時に行う「コグニサイズ」について、軽度認知障害の高齢者100人で介入型研究を行った結果、認知機能や脳の萎縮(いしゅく)の改善が見られた。認知機能の低下を防げれば、認知症の発症を先送りできる可能性が高いという。

 WHO(世界保健機関)は今月、認知症予防ガイドライン(指針)を発表した。強く推奨するのは、健常者の「運動」と喫煙者の「禁煙」、高血圧患者の「降圧」と糖尿病患者の「治療」。「健康的でバランスの取れた食事」「(オリーブオイルを使った)地中海食」は「条件付き推奨」とし、ビタミンや不飽和脂肪酸などのサプリメントは推奨しなかった。

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