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睡眠不足はアゴが原因?|アゴと睡眠の深い関係
平均睡眠時間が6時間未満の日本人の割合は20歳以上で39.5%
文/藤原邦康
米国の研究機関、ランド研究所のレポートによると、睡眠負債は日本で15兆円に達すると試算されています。厚生労働省の国民健康・栄養調査(2015年)でも平均睡眠時間が6時間未満の日本人の割合は20歳以上で39.5%存在することが報告されており、実に40%近くの現代人が睡眠負債を抱えている事実が浮かび上がっています。「負債」と表現されるのは返済すべき睡眠が借金のように溜まっていくというニュアンスです。睡眠不足が続いて睡眠負債が累積していくと、命を縮め健康を崩しやすくなるとも考えられています。
米シカゴ大学による2014年の研究で、睡眠負債を抱えたマウスに癌細胞が増殖することが判明しました。乳癌については、東北大学の研究によって睡眠時間が平均6時間以下の場合は7時間以上の睡眠に比べてリスクが約1.6倍に及ぶことが判っています。
睡眠が十分でないと体調を崩しやすくなるだけではありません。寝不足では注意力が散漫になることは想像に難くありませんが、実際に集中力が落ちパフォーマンス低下を招くことが証明されています。米ペンシルバニア大学などの研究チームによる実験では、睡眠時間6時間を2週間続けると2日間徹夜したのと同等に脳機能が低下するとのことです。睡眠負債の蓄積は認知症リスクにもつながることも指摘されています。アルツハイマー病の原因物質ともいわれるアミロイドβというたんぱく質が、不十分な睡眠では排出しきれずに脳に蓄積するためだと考えられています。
これらの事実を鑑みると、睡眠負債は長期に渡って体をむしばんでいくことは明白です。睡眠時間を削って活動することは短期的なメリットしか生まないことを実感しますね。何をおいてもまず、睡眠時間をしっかり確保することが健康で文化的な生活を送るためには欠かせないと言えます。もちろん、ひたすら長い惰眠をむさぼれば良いというわけではなく、睡眠の質も疲労回復効果を十分に得るうえでは重要です。
睡眠の質と大きく関わるのが、自律神経のバランス。つまり、交感神経と副交感神経の切り替えによって、緊張して集中すべきときとリラックスすべきときのタイミングを上手に取ることが大切です。そして、交感神経と副交感神経の均衡を保つうえで大きく関わるのが、脳神経支配によって本能的に基づく反射作用を起こす顎関節の機能です。顎関節はストレスや恐怖などの外的負担によって反射的に働くため、自律神経との関わりが深い「臓器」だと言えます。アゴと睡眠の深い関係性について解説していきましょう。