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肺がんと胃がん X線、バリウム以外の検査方法が増える
「毎年、自治体の肺がん検診でレントゲン検査を受けていたのに、去年の検査で『肺に影がある』と言われたんです。精密検査をしたら、診断は肺がんで、すでにステージIIでした。ちゃんと検診を受けていたから早期発見できると思っていたのに……」
【一覧】検査で「見つかる」「わかりにくい」病気首都圏在住の70代男性は、肩を落として語った。
全てのがんのうち、男性の死亡者数が最も多いのが、肺がんだ(女性は2位)。早期発見が重視されるがんのひとつで、5年生存率は、ステージIでは81.8%だが、ステージIIでは48.4%と急落する。
それだけに、男性は毎年「レントゲン(胸部X線)検査」を受け、万全の注意を払ってきたという。にもかかわらず、早期発見できなかったのはなぜか。人間ドック、検診を毎年多く手がける東京国際クリニックの高橋通・院長(循環器科)が解説する。
「検査によって“得意とする病気”と“不得手な病気”があるからです。
肺のレントゲン検査は、肺炎、肺結核、肺気腫、気胸などの呼吸器疾患や、心不全などの循環器疾患を発見できます。たとえば肺炎なら、レントゲン写真に“白い陰影”が映るなど、医師が判断しやすい特徴があるからです。
一方、肋骨の重なりや血管の影、横隔膜の影、心臓の後面は、正面からの撮影では死角となり、病変が映らなかったり、わかりにくいケースがある。そのため、肺がんのレントゲン診断には限界があるのです」
事実、胸部X線検査における肺がんの偽陰性率(実際は陽性なのに「陰性」の検査結果が出た割合)は、最大で50%というデータもある(日本医療機能評価機構が複数の研究結果をまとめた報告より)。つまり、半数の肺がんが“見逃されている”ことになる。
同様の傾向は、胃の「バリウム(上部消化管X線)検査」にもあるという。
「バリウム検査では、胃潰瘍やポリープは比較的見つけやすい。ただ、腫瘍が小さい初期の胃がんや、壁づたいに広がるような食道がんの早期発見には向きません」(同前)
厚生労働省の「地域保健・健康増進報告」によれば、2016年度の新規胃がん患者13万人のうち、自治体のバリウム検査で発見されたものはわずか4500人にとどまった。
そのため、近年は「肺がん」「胃がん」の早期発見のためには、別の検査手法が選ばれることが増えてきた。
※週刊ポスト2019年7月19・26日号