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認知症高齢者の事故、独自の救済制度検討へ-神戸市、損害賠償に市費投入も(医療介護CBニュース)

神戸市は、認知症高齢者の徘徊による鉄道事故などで家族が賠償金を求められるケースを想定し、独自の救済制度の創設を検討することを明らかにした。こうした事故の損害賠償に関しては、家族を対象にした救済制度はないため、市費の投入も視野に入れた補償制度を考える。同市や厚生労働省によると、こうした制度を自治体が独自に創設するのは極めて珍しいという。【新井哉】

 認知症高齢者の鉄道事故をめぐっては、2007年12月、愛知県内の認知症の男性(当時91歳)が線路内に立ち入り、列車にはねられて死亡。JR東海が男性の家族に約720万円の損害賠償を求め、1審は請求の全額、2審は約360万円の支払いを命じた。しかし、今年3月の最高裁判決では、「生活状況や心身の状況、介護の実態を総合的に考慮すべきだ」などとの判断を示し、家族に賠償を命じた2審の判決を破棄する判決を言い渡した。

 こうした損害賠償の訴訟を踏まえ、神戸市は、市内に居住する認知症の高齢者が第三者にけがを負わせたり、物を壊したりした場合、裁判で家族らが賠償を求められる恐れがあるため、救済制度の検討を行うことを決めた。

 訴訟で損害賠償額が確定した事案について、一定額の給付ができないか検討する方針で、補償制度のイメージとして、▽市費などによる給付▽任意の加入者の掛け金を財源とした共済制度▽強制加入による保険制度―の3つのパターンを検討することを考えているという。

 今後、制度の内容や給付方法などの検討を行い、来年度予算に関連経費を計上する見通し。久元喜造市長は13日の記者会見で、「社会全体で苦痛や負担を分かち合うことができないかという観点で、市独自の賠償制度を検討したい」と述べた。