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共生し認知症予防 生活に適度な緊張 健幸を求めて
高齢者が空き室を提供し、入居する若者と交流しながら暮らす京都府の次世代型下宿事業「京都ソリデール」。もともとは若者が住みやすい環境を整えて将来的な定住につなげる試みとして二〇一六(平成二十八)年度に始まった。専門家は、人と触れ合うことで認知症の予防や一人暮らし高齢者の見守りにもつながっていると指摘する。
事業開始から、これまでに同居が成立したのは計二十一組。二〇一六年度と二〇一七年度が各四組、二〇一八年度が十三組。今年度は現時点で既に十組となっている。
契約期間は基本的に一年だが、満了後も継続して住みたいと申し出る若者が多い。世代や文化が違う他人同士の同居が長続きする秘訣(ひけつ)は何なのか。事業を管轄する府住宅課の岡田有資課長(59)は「同居を希望する若者と高齢者の相性を重視し、事前のマッチング(組み合わせ)に力を入れている」と説明する。
同居を希望する若者と高齢者の募集は、府が公募する「マッチング事業者」が担当する。事業者の顔触れは学生と地域支援活動に取り組む企業や住宅の賃貸などに携わるNPO法人、高齢者生活協同組合など多種多様だ。事業者は希望する高齢者と学生の双方と面談し、同居の条件や普段の生活習慣を聞き取る。さらに顔合わせと意見交換の場を設けて互いの要望を調整し、最適な組み合わせをマッチングする。トラブルなどがないよう、入居後も定期的に訪問したり面談したりするなどしている。
国立長寿医療研究センターなどの調査チームは二〇一七年、友人と交流し、地域の活動に参加するなど社会的なつながりが多い高齢者は、認知症の発症リスクが低下するという調査結果を発表した。「同居家族と悩み相談などをする」「友人との交流がある」「配偶者がいる」「地域のグループ活動に参加している」「働いている」の五項目全てに当てはまる人は、ゼロか一つの人と比べて46%下がるという。
若者と高齢者の同居を支援する事業は京都府以外でも行われている。福井大と福井県社会福祉協議会は異世代シェアハウス事業「たすかりす」を共同展開している。同大の菊地吉信准教授(45)=住環境計画=は「(利用者から)普段の何気ない動作や身支度にも適度な緊張感が出て、頭が若返るという声をもらう」と認知症予防への効果を期待する。お互いが負担にならないよう、基本的に一人で生活できるのが同居の前提としつつ「超高齢社会が進展する中で、こういう暮らし方もあるという選択肢を社会に提示していく時なのでは」と指摘した。
京都ソリデールや「たすかりす」のように、共生・共助を基本とする、高齢者の新たな暮らしの在り方を探る動きは東北地方でも活発になってきている。