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太っている人ほど脳が萎縮 認知症発症に関係?

太っている人の脳は萎縮している。特に、お腹周りが大きいいわゆるメタボ体型で、BMI(*1)が30以上ある人では脳の萎縮が最大になる――。そんな気になる研究結果が、英国の研究者らによってNeurology誌に報告されました。

●「肥満は認知症のリスクを高める」という仮説は本当か?

 認知症は、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく神経変性疾患の代表ですが、そうした疾患に対する有効性の高い治療法は現時点ではないため、新治療の開発と並行して、予防対策に関する研究も精力的に進められています。例えば、「生活改善などにより解消可能な肥満が認知症のリスクを高めるのではないか」と仮定した研究が複数行われましたが、これまでのところ一貫した結果は得られていません。

 今回、英Loughborough大学のMark Hamer氏らは、認知症ではない中高年の男女を対象として、「BMIを指標とする肥満」および「ウエスト・ヒップ比(*2)を指標とする肥満」、「体脂肪量」と、MRI検査により明らかになる脳の萎縮の関係を調べました。

 脳の萎縮についてはこれまでに、白質と灰白質の萎縮が、エピソード記憶(本人が経験した出来事に関する記憶)の低下と認知症リスクに関係することなどが示されています。

●BMIが高い人ほど脳の灰白質の容積が小さい

 研究者たちが分析対象にしたのは、英国の22施設で行われた「UK Biobank Study」に参加した40~69歳の人々です。それらの人々の中から、認知症に該当せず、分析に必要なデータと頭部MRI画像がそろっていた9652人(平均年齢55.4歳、47.9%が男性)を選びました。

 9652人中18.7%がBMI30以上で、肥満に分類されました。それら肥満者には、心疾患と高血圧が多く見られました。

 MRI画像とBMIの関係を検討したところ、BMIが高いほど、脳の灰白質(*3)の容積が小さいことが示されました。脳の構造異常に関連する可能性のある要因(年齢、性別、飲酒・喫煙習慣、身体活動量、高血圧など)を考慮して検討しても、この関係は明らかでした。同様に、ウエスト・ヒップ比が大きい(女性で0.85超、男性で0.90超)ほど、また、体脂肪量が大きいほど、灰白質の容積は小さくなっていました。

 一方、肥満と白質の容積の間には、意味のある関係は見られませんでした。

 BMIが高くなるにつれて灰白質容積が減少する状態は、対象者を年齢群(40~50歳、51~60歳、61~69歳)に分けても、男女別に分析しても、同様に認められました。

 さらに、糖尿病は脳の萎縮と関係することから、糖尿病の有無についても考慮して分析しましたが、BMIと灰白質萎縮の関係は若干弱まっただけでした。

*1 BMI(Body Mass Index:体格指数)(kg/m 2)=体重(kg)÷〔身長(m)〕2。日本肥満学会による基準ではBMI 25以上、WHO(世界保健機関)の基準ではBMI 30以上が肥満と定義される。

*2 ウエスト・ヒップ比:ウエスト周囲径をヒップ周囲径で割った値。ウエスト・ヒップ比が大きい(女性で0.85超、男性で0.90超)ことは、内臓に脂肪が蓄積している「内臓脂肪型肥満」(ウエスト回りが大きい、いわゆるメタボ体型)であることを示唆する。

*3 灰白質は神経細胞の細胞体が存在する領域で、アルツハイマー病などの認知症の患者には灰白質の萎縮が見られる。

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