介護・医療関連ニュース
-
成年後見制度、精神科病院での活用例も-日本精神保健福祉士協会がハンドブック(医療介護CBニュース)
日本精神保健福祉士協会は、精神科病院や在宅での成年後見制度の活用例や精神障害者の自己決定支援などを紹介するハンドブックを作成した。成年後見制度を、地域包括ケアの推進や、病院・施設からの地域移行などを支える「重要な社会資源」と位置付け、選任や支援を行う際、患者の主治医と精神保健福祉士らによる多職種連携が必要としている。【新井哉】
成年後見制度は、認知症や精神障害などで判断能力が十分でない人でも、不利益を受けないように、家庭裁判所に申し立てて、援助する人を選任する制度。病状によって精神障害者本人が散財してしまい、生活の破綻が想定される場合や、多額の遺産や資産を管理できず、親族もいないといった理由で金銭管理を第三者に依頼せざるを得ない場合、成年後見人が必要となる。
ガイドブックでは、申し立てる際に必要な診断書を書く主治医が、本人の病気や体調を最も把握していることなどに触れ、医療機関との関係は申し立てだけの関係に終わらせず、長期的なかかわりを持つことが大切と説明。本人の生活状況などを把握するため、精神保健福祉士と連携する必要性も挙げている。
また、精神科病院や入所施設における成年後見制度の活用例を示した。例えば統合失調症で精神科病院に通院している50歳代の男性のケースでは、浪費を心配して通帳を管理する妹に対し、「泥棒されている」などと騒ぐようになり、言動がエスカレートする中、入院が必要と主治医が判断。この男性と同居している母親が高齢であるため、妹が同意して医療保護入院となった。
しかし、入院してからも妹や母親に罵声を浴びせる内容の電話を頻繁にするようになり、妹からは「もうかかわりたくない。ですが、通帳を渡せば本人の治療費等が支払えなくなってしまう」といった話が出てきた。病院の精神保健福祉士を中心に、主治医やこれまで関係していた機関とカンファレンスを行った結果、成年後見制度の利用を検討することになり、弁護士や精神保健福祉士が選任されたという。
こうした金銭の問題をめぐっては、長期入院者の金銭管理を病院が行っている実情が少なからずあることを指摘。本人や家族が対応できず、やむを得ず病院が管理している場合でも利益相反となる可能性が高いが、成年後見人が選任されることで利益相反が解消されるとしている。