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iPSにゲノム編集移植 拒絶反応の壁乗り越え 実用化に期待(産経新聞)
京都大のグループが8日付の米科学誌電子版で、人工多能性幹細胞(iPS細胞)をゲノム編集し、移植時に拒絶反応のリスクを大幅に減らす新技術を発表した。拒絶反応の壁という、再生医療の最大の課題を乗り越える道筋を示した画期的な成果だ。
再生医療の理想は、拒絶反応がないとされる患者自身の細胞で作ったiPS細胞を「自家移植」することだ。しかし、このやり方では移植用のiPS細胞を作製するのに膨大な時間と費用がかかる。
このため、他人の細胞から作ったiPS細胞を備蓄しておいて患者に移植する方法をとることになるが、拒絶反応への対策が最大の課題になっていた。
京大は平成25年、多様なiPS細胞を備蓄する「ストック事業」を開始。ただ、現状では、日本人に限定しても対応可能な割合は3割だけだ。より多くの人に、より安価にiPS細胞を移植できるようにするには、拒絶反応を起こしにくい安全なiPS細胞を作る技術が不可欠。京大グループは今回、遺伝子を操作するゲノム編集によって一つの道筋を示したといえる。
だが、開発された新技術は、取り除く必要のない遺伝子まで除去してしまうリスクをはらんでいる。ゲノム編集を用いて作製されたiPS細胞が、他の細胞に確実に変化することができるかも未知数だ。
2月に東京都内で開かれたシンポジウムで、京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は「ゲノム編集技術を用いて免疫の型を変え、より多くの人に移植できる次世代のiPS細胞のストックを計画中で、来年には順次そろえていきたい」との目標を明かしている。
再生医療の世界的な普及につなげることができるのか。今後の実用化に期待が集まる。(宇山友明)