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iPS「日本人95%に安全移植」 京大、ゲノム編集で(産経新聞)

遺伝子を改変するゲノム編集技術を使って、人に移植する際に拒絶反応が起こりにくい人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作る方法を開発したと、京都大の堀田秋津(あきつ)講師(幹細胞遺伝子工学)らのグループが8日付の米科学誌電子版に発表した。グループはこの方法により「日本人の95%以上に安全なiPS細胞を提供できる」とみている。

 人の細胞から作製したiPS細胞を他人に移植する再生医療では拒絶反応が起こる可能性が高い。人は細胞にある「HLA」という分子の型が自分と他人では異なり、免疫細胞「キラーT細胞」などが移植されたiPS細胞を異物として攻撃するためだ。

 こうした免疫細胞による攻撃を防ぐため、研究グループは「クリスパー・キャス9」と呼ばれるゲノム編集技術を使用。移植の際に異物と認識される可能性のあるHLA分子の一部を取り除く技術を開発した。

 この方法で作ったiPS細胞をマウスに移植して観察した結果、キラーT細胞からの攻撃を受けにくいことを確認できたという。

 新技術で作ったiPS細胞について、研究グループは「理論上、7パターンのHLA型のiPS細胞をつくることで、日本人の95%以上に拒絶反応が起こりにくい状態で移植できる」と試算した。

 また、12パターンのHLA型であれば、世界各国の大半の人をカバーすることができる可能性があるとしている。

 実用化には、安全性や遺伝子を除去する技術の正確性の向上が課題だが、堀田講師は「今回開発した方法により、日本人だけでなく世界中の多くの人に移植可能なiPS細胞を作製できると考えている」としている。