介護・医療関連ニュース

睡眠3時間の老老介護「私の方がいつ倒れてもおかしくない」 結婚して60年、体も心も限界

京都市南区の自宅で認知症の夫(89)を10年前から介護する女性(82)はため息をつく。睡眠時間は毎日3時間。「私の方がいつ倒れてもおかしくない」。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の日々に体力や精神をすり減らす。
 夜。気が付くと夫の寝間着や毛布が尿でぬれている。おむつやパッドを着けているが、寝ている間に外れてしまう。女性は1晩に2回、夫を着替えさせる。たびたび起き上がる夫。いつ動き出すのか。神経が休まらないまま、夜が明ける。以前は外をうろついたり、寝室の家具に頭をぶつけて流血したりした。
 夫は介護保険でデイサービスを週5回、週3日のショートステイを月2回利用する。女性は夫がいない日中に毛布などを洗い、家事をこなす。先が見えない日々。自身も昨夏から神経性の下痢に悩まされる。
 「結婚して60年。夫にはよくしてあげたいが、介護殺人のニュースを聞くと人ごとではないと思う。長生きし過ぎたんだろうか」

睡眠3時間の老老介護「私の方がいつ倒れてもおかしくない」 結婚して60年、体も心も限界

京都府と滋賀県の高齢化(国勢調査)

高齢者には金銭負担の不安も

 誰もが介護を必要としたり、担ったりする可能性が高まる超高齢社会。悩みや課題を抱える当事者同士が支え合う動きが広がる。
 「認知症の人と家族の会滋賀県支部」は2013年から月2回、守山市の平和堂守山店でカフェ「やすらぎ庵」を開いている。患者と一緒に訪れた介護者らは茶を飲みながら、世間話や悩みを語り合う。
 カフェで介護者の話し相手を務める原田節子さん(71)=草津市。支部世話人の一人で、認知症の父が94歳で亡くなるまでの約5年間、母と一緒に在宅介護を経験した。
 特別養護老人ホームの職員だったため介護には慣れているつもりだったが、家族の精神的な負担や自分の仕事への影響など当事者になって初めて気付いたこともある。「本音を漏らし、共感を得られるカフェのような場があるのは大事なこと。自分が話を聞くことで少しでも訪れた人の気持ちが楽になれば」と願う。
 高齢者には金銭負担の不安もつきまとう。京都市北区の杉江嘉則さん(74)、良子さん(72)の夫妻はどちらも約10年前に脳梗塞で倒れた。嘉則さんは左足が不自由、良子さんは高次脳機能障害の影響が残る。ヘルパーによる料理や掃除などの生活援助、訪問看護やデイサービスを利用しながら2人で助け合う。
 年金生活のため、これらのサービスの自己負担分を支払えない時期もあったという。良子さんは「貯蓄も取り崩し、生活はかつかつ。介護保険制度が始まった時は、介護を社会で担う素晴らしい取り組みだと思ったのに」とこぼす。
 京都府内のヘルパーでつくる京都ヘルパー連絡会は2月、京都府議会と京都市議会の各会派に統一地方選を見据えた公開質問状を送った。介護保険料の金額設定や福祉人材確保の対応策を問うたが、回答があったのはごく一部。代表世話人の櫻庭葉子さん(43)は「選挙でもっと議論してほしい」と訴える。
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 1カ月後に幕を閉じる平成で最後の統一地方選が京都、滋賀でも始まった。激変の31年間。バブル経済の崩壊や金融危機を経て地域は疲弊した。大きな自然災害が相次ぎ発生したほか、少子高齢化も加速し、住民や自治を取り巻く社会環境は揺れ動いた。平成の軌跡をたどりつつ、京滋の現場で課題と向き合い、次の時代へ一歩を踏み出そうとする人たちの姿を追う。