介護・医療関連ニュース
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認知症を進行させない2つの「つながり」ノンフィクション作家が取材で見つけたこと
認知症当事者たちの生の声を集めた『ゆかいな認知症』(講談社現代新書)の著者でノンフィクション作家の奥野修司さんは、認知症の初期の段階でどんな活動をするかが、その後の症状の進行に大きく影響すると言います。それはいったい、どういうことなのでしょうか。
アナログ時計は読めてもデジタル時計は読めない
――著書では認知症の当事者たちのさまざまなエピソードが紹介されていますが、一言で「認知症」と言っても、その症状は人によってあまりに違うことに驚きました。
認知症によって抱える障害は、人によってさまざまです。認知症は記憶力が衰えると言われますが、多少の衰えはあっても日常生活に大して支障がない人もいます。ただ、そんな人でも文章を読もうとすると、1行読み終えた後の次の文章がどこにつながるのかわからず、止まってしまうケースがある。
一方で、記憶障害はないけれど、空間認知障害のため、服を着ようとしても袖に自分の腕を通すことができなかったり、駅の切符売り場で小銭を投入することができなかったりする人もいます。ほかにも、アナログ時計は読めてもデジタル時計が読めない人がいたり、逆にデジタル時計だけが読める人がいたり――。
だから、当事者がいま困っていることは何かを知ることが、介護する家族にとって重要です。
そして、前述した通り、認知症というのは単に認知障害があるだけで、人としての基本的な部分は私たちと変わらないんだという認識を持つべきでしょう。
たとえば、足の障害があって歩けなければ、足の機能をサポートするツール=車いすなどを使って自立した生活ができるよう周りもサポートします。それは認知症の人も同じで、当事者にとって何が障害になっているのかがわかれば、それをサポートするツールを使えばいい。そうすれば、障害の程度によっては“普通の生活”が送れるはずです。
当事者たちもそれぞれ自分なりに工夫して、なんとか自立した生活を送ろうと努力しています。カレンダーやメモ帳を駆使して記憶を補完したり、スマートフォンの地図アプリを使って常に自分の位置を把握したりしています。あるいは、とにかく人に聞いて手伝ってもらうことが重要な“ツール”の役割を果たす場合もあります。1/4ページ