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人の名前が出てこない…度忘れ大丈夫? もしや認知症?
人の名前が出てこない、「あれ、それ」が多くなった、度忘れが増えた。もしや認知症!?――あなたもそんな悩みを抱えていませんか。もの忘れの背景には病気などの原因が潜んでいることもあるのです。
【関連画像】年齢とともに認知機能は低下する 1300人(6~80歳)を対象に、言葉を逆から言うなど、ワーキングメモリを調べる6種類のテストを実施。縦軸のゼロが、テストの平均点を示す。40代ごろから点数はぐっと落ちるが、ばらつきが大きい。「年をとっても成績のいい人はいる。頭の使い方次第で認知機能の低下を防げる」と篠原教授。(データ:篠原教授)
●「疲れ・ストレス型」が多い
もの忘れが多く、認知症の心配をしている人もいるのでは。
「40、50代で、もの忘れを気にして受診する人もいるが、このくらいの年代なら認知症以外の原因であることがほとんど」と東京医科歯科大学特任教授の朝田隆教授。牧野クリニック心療内科の牧野真理子医師も、「もの忘れが多くても、あとで『ああ、そうだった』と思い出せるなら認知症の心配はない」と言う。
病気でない「もの忘れ」の背景には……
加齢や疲労、睡眠不足、悩み事、ハードワークなどが重なると、脳もキャパオーバーになり、注意力や集中力が低下し、もの忘れを招く。病気ではなく、日常生活の中に原因があるこのタイプが一番多い。
では、本当の原因は?
「一番多いのは、疲れやストレスなどから一時的に頭の働きが落ちているケース。疲れているうえに悩みなどがあれば、誰でももの忘れが増える」(牧野医師)。
加齢も影響する。「もの忘れには、複数の情報を一時的に脳にメモする『ワーキングメモリ(作業記憶)』の力が関わっている。これは普通、加齢とともに低下する」と公立諏訪東京理科大学・医療介護健康工学部門長の篠原菊紀教授(関連画像のグラフ)。もの忘れの背後に隠れている病気の可能性
一方、背後に何らかの病気が隠れていることも。多いのはうつ病だ。「うつになると脳の血流も悪くなり、脳全体の機能が落ちる。集中力や注意力、判断力も低下するので、当然、もの忘れも多くなる」と牧野医師。
「女性の場合、甲状腺機能低下症によるもの忘れも多い」(牧野医師)。甲状腺ホルモンの分泌が低下して、体全体の代謝が落ちるため、体重増加、冷え、眠気などに加え、頭がよく働かない、意欲低下などの症状が出る。
意外な原因には、てんかんもある。「発作が起こると、数分~数十分間、意識が朦朧(もうろう)となり、その間の記憶がなくなる。けいれんは伴わず、周りからは単にボーッとしているように見える」と朝田教授。
また栄養不足が原因のことも。「ダイエットや摂食障害で、脳に欠かせないビタミンB12やB1、葉酸などが不足し、ボーッとしたり、記憶力が落ちたりする」(牧野医師)。ほかに更年期症状の一つとして起こったり、精神安定剤や入眠剤などの薬の不適切な使い方が原因のことも。
次ページで認知症リスクと、認知症でない場合の物忘れの原因チェックをしよう。
●みんなが心配な認知症ってどんな病気?
その前に、そもそも認知症とは何かをおさらいしよう。
記憶力や判断力などの認知機能の低下が徐々に進行していくのが、認知症だ。原因となる病気はたくさんあり、最も多いのがアルツハイマー病だ。認知症人口は増加の一途で、現在、予備軍も含めると65歳以上の4人に1人が該当するという報告も。
最近、注目されているのは、認知症の予備軍に当たる「軽度認知障害(MCI)」。「新しいことが覚えられないなど、記憶力だけが低下した状態。判断力や数学的能力など通常の知能には問題ないが、4~5年で約半数が認知症に進む」と朝田教授。MCIは認知症に進むかどうかの分かれ道。この段階で早く見つけて手を打つことが重要だ(近日公開の下編記事を参照)。
●前段階の「軽度認知障害(MCI)」を早く見つけて!
【MCIチェック】
□ 新しいことが覚えられない
□ 同じことを言ったり、聞いたりする
□ 長年の趣味を楽しめなくなった
□ 料理のレパートリーが減ってきた
□ 細かいお金の計算が苦手になり、お札で支払うことが増えた
□ 前回までの話を覚えていないので、連続ドラマを見なくなった
これらはあくまで目安。生活に支障が出るほどではないが、記憶力の低下から生活にいくらか変化が生じている状態。