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歯周病菌に加え「虫歯菌」も認知症の原因に!? 必読!口と腸と生活習慣病の深い関係

【必読! 口と腸と生活習慣病の深い関係】

 今回は最も避けたい病気の一つ、認知症と口腔細菌の関係について説明したい。

 認知症にはいくつか種類があるが、そのうちキーストーン病原体の一つであるジンジバリス菌が影響するのが、アルツハイマー型認知症だ。そして脳血管性認知症には、虫歯菌の代表であり、これもキーストーン病原体の一つであるミュータンス菌が関係していることが明らかになっている。

 ジンジバリス菌とアルツハイマー型認知症の関係から説明しよう。

 アルツハイマー型認知症患者の脳を調べると、ジンジバリス菌の内毒素(細胞壁の成分、発熱などを起こす)が検出される。通常は血液脳関門によって、脳のエネルギーであるブドウ糖などの有益な物質のみが脳に到達できるようになっているが、この内毒素は通過できることが分かっている。

 九州大学大学院歯学研究院の武洲准教授らによるマウスでの研究(2017年)によると、この内毒素が脳に侵入すると、炎症が引き起こされ、脳神経細胞外のアミロイドβの沈着量が増えることなどが分かった。

 この内毒素が脳内に入り発熱、つまり炎症を起こすと、免疫細胞の一種で脳内のマクロファージと言われる「グリア細胞」が活性化する。そこに、アミロイドβが蓄積して傷ついたり、内毒素に含まれる、タンパク質を別のタンパク質に変えてしまう酵素(PPAD)によって性質を変えられた脳神経細胞をグリア細胞が異物とみなし、どんどん食べていくために脳が萎縮していく、という仮説が、マウスの実験等の結果により考えられている。

 アミロイドβは脳以外でも作られ、血液循環を介して血液脳関門を通過してくる可能性もある。口腔細菌研究の第一人者である、鶴見大学歯学部探索歯学部(神奈川県横浜市)の花田信弘教授=顔写真=が説明する。

 「細菌により生成された内毒素は、血液脳関門を通過できるという報告があります。つまり、ジンジバリス菌を放置していると、脳の内側で細菌の内毒素が炎症を引き起こし、アミロイドβを沈着させる可能性があるのです」

 認知症のもう一つのタイプ、脳血管性認知症は、虫歯の原因菌の代表であるミュータンス菌が多い人でリスクが高いことが、国立循環器病研究センターの研究などにより分かっている。

 一部のミュータンス菌は、コラーゲンに結合する特殊なタンパク質をまとっている。それが血液に乗って脳に到達すると、脳血管のコラーゲンと結合し、脳出血、特に微小出血が有意に多く見られることが明らかになっている。この出血自体が脳血管性認知症の原因になりうるし、さらにミュータンス菌を多く保持している人は、単語を思い出しにくくなることも報告されている。

 「大人は歯周病だけでなく、どちらかというと軽視されていた虫歯にも注意する必要があります。大人は歯肉が下がって象牙質がむき出しになった歯の横面に虫歯ができやすく、そこから象牙細管という細い穴が歯髄(神経や血管)に向かって伸びているため、ミュータンス菌が簡単に血液中に入ってしまうからです」と花田教授。

 その他、ミュータンス菌が引き起こす可能性がある病気はクローン病が有名だ。次回はそれらを予防する方法について。(石井悦子)