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【デキる人の健康学】血中ビタミンD濃度と発がんリスクの関係(産経新聞)
以前の本コラムで日光浴に寿命延伸効果があることや心臓病の死亡率を下げる効果があることを紹介した。皮膚が紫外線を浴びることによりビタミンDが合成されるので、日光浴を習慣にしている人や高緯度地方に住む人、あるいは冬期には血中ビタミンD(25(OH)D)の濃度が低く、逆に日光浴を習慣にしている人や低緯度地方に住む人、あるいは夏期には血中ビタミンD濃度は高いことが知られている。
米国カリフォルニア大学サンディエゴ校公衆衛生学のセドリック・ガーランド教授らの研究チームはこれまでに、高緯度地方に住む血中ビタミンD濃度が低い人の調査から血中ビタミンD濃度が低いと結腸がんのみならず、乳がん、肺がん、膀胱がんの発がんリスクが高くなることを報告してきた。
今回、研究チームは血中濃度が高い集団にまで調査対象を広げた結果、血中濃度は高ければ高いほど発がんリスクは更に下がることを見出した。合計2304人を対象にした複数の研究でビタミンDの血中濃度と発がんの関連性を検討すると、血中濃度が20ng/ml未満の人の発がんリスクに対して、血中濃度が20~39ng/mlの人の発がんリスクは39%、血中濃度が40ng/ml以上の人の発がんリスクは67%も低くなっていることが分かった。
興味深いことに、最新の研究でこれまでには報告されていなかったビタミンDの代謝産物の存在が明らかにされ、活性型ビタミンDよりも強力なガン細胞の増殖抑制効果と細胞を分化誘導する作用がある点をガーランド教授は指摘する。
日本人は紫外線を回避する傾向が強く、多くの人が血中濃度20ng/ml未満を示している。そのような人は、発がんのリスクを下げるためには食事や日光浴により血中ビタミンDを上昇させる必要がある。サプリメントが有効との報告もあるが、がんを予防するためにどの程度の摂取量が必要なのか更なる研究が必要だろう。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。