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【デキる人の健康学】「健康的肥満」と「不健康肥満」の違いとは(産経新聞)

一般にBMIが30以上の人を肥満、25以上の人を過体重と呼んでいるが(日本では25以上を肥満と呼んでいる)、2013年に発表された188ヵ国の1700件以上の調査・研究をまとめた世界肥満実態調査によると世界の成人の過体重・肥満の割合は男性で37%、女性で38%であることが判明した。

 肥満の発症には遺伝や食事や運動不足など様々な要因が複雑に関与しているが、糖尿病、動脈硬化、高血圧、高脂血庄、睡眠時無呼吸、変形性関節症、癌や認知症などを合併することから大きな社会問題となっている。

 しかし、健康的な生活習慣を守っている肥満の人は糖尿病などの合併を起こしにくいことが知られていた。それでは健康的な肥満と合併症を引き起こす不健康なの肥満とはどこが違うのだろうか?

 オーストラリアのガーバン医学研究所のジェリー・グリーンフィールド博士は、太っていても血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが良い人は糖尿病などの合併症を発症しにくいことに注目した。

 研究チームが64人の肥満者の肝臓と筋肉におけるインスリンの効きを検査した結果、肝臓か筋肉のいずれかの臓器でインスリンの効きが良いタイプ、両臓器共に効きが良いタイプ、両臓器で効きが悪いタイプの4群に分類されることが分かった。

 興味深いことに肝臓か筋肉のどちらか一方のインスリンの効きが良いだけで、代謝的に健康で、低血圧の傾向にあり、腹部や肝臓の脂肪が少なく、両臓器共に効きが良いタイプと同様に健康的な肥満であることが判明した。

 インスリンは脂肪に脂肪を蓄積させることから肥満の発症に重要なホルモンであるが、筋肉に働くと食後の血糖を抑える働き、肝臓に働くと空腹時の血糖を低く抑える働きがある。研究チームは太っていても空腹時血糖や食後血糖を低く保てば肥満の合併症を防げる可能性を示唆する。これからは体重計よりも血糖測定器が有効かも知れない。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。