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認知症の発症リスク 1位は年齢、2位は難聴

実は老後生活の明暗を分けるほど重要なのが「聴力の衰え」である。『老人性難聴』は“忘れっぽくなった”、“言うことを聴かなくなった”と思われてしまいやすい。聞こえないからイライラするようになって“怒りっぽくなった”との評判を生むこともある。

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 このように耳の衰えは老後生活を一変させるリスクを多く孕んでいるにもかかわらず、放置している高齢者は多いという。

「難聴と並んでほぼすべての人に現われる老化現象として老眼がありますが、老眼の場合は老眼鏡をかけたり、文字から目を離して見たりして自分で対応することができるのに対し、難聴の場合は相手がいることなので、人に迷惑をかけたり不快な思いをさせてしまうことがある。後ろめたい気持ちがあるからなかなか周囲に相談することもできず、補聴器をつけるのに抵抗があるから病院に行くこともためらってしまう。そのようにして、ますます孤立してしまう高齢者が多いのです」(同前)

 元自動車部品メーカーの営業マンだったBさん(68)が嘆く。

「私の場合は50代後半から聞こえづらくなった。特に同僚の挨拶なんかは小さな声だから聞き取りづらくて、結果として無視してしまっていたことも多かったようです。補聴器をすればいいのでしょうが、年寄り扱いされるのが嫌でする気になれず、病院にも行ってない。仕事をリタイアしてからは、家にこもり気味になっています」

 しかし、たかが難聴とそのまま放置しておくと、さらに重大な事態を招きかねない。『あぶない! 聞こえの悪さがボケの始まり』の著者で川越耳科学クリニック院長の坂田英明氏が指摘する。

「難聴を放っておくと、認知症を引き起こす可能性があります。認知症の発症リスクの1位は年齢ですが、2位は難聴です。耳から入ってくる情報は内耳で電気信号に変換され、脳幹を通って絶えず脳に送られている。難聴になるとその脳を刺激する情報量が急劇に減ってしまうため、脳はどんどん衰え、認知症に繋がってしまうのです。2015年に厚労省が発表した『認知症施策推進総合戦略』でも、聴力の低下と認知症には深い関連があると言及されています」

 だからこそ、難聴には早めの対処が必要だという。

「老人性難聴は徐々に進行していきますが、けっして放置してはいけません。まずは日常生活の中で、進行を食い止めたり、改善させることが必要です」(同前)

※週刊ポスト2019年6月28日号