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「メタボリックシンドローム」が発症前にわかる!? その仕組みと“未病対策”がもたらす恩恵を聞いた

人生100年時代、そして超高齢化社会を迎えるといわれる昨今、“未病対策”の重要性がよく言われている。

【画像】DNB理論のイメージ図

“未病”とは、健康な状態と病気の状態の間の状態のこと。自覚症状はなくても検査で異常がみられる場合と、自覚症状があっても検査では異常がない場合に大別される。
これまで未病は、経験知に基づく概念的なもので、その存在は科学的に証明されていなかったが、6月24日、富山大と東京大の研究グループが、血圧や心拍数などの生体信号の揺らぎによって、メタボリックシンドロームを未病の段階で検出することに成功したことを発表した。

これにより、メタボ発症前に、早期治療を行うことが可能になるという。

「メタボが気になる」という人も多いと思うが、「生体信号の揺らぎ」とはどういうことなのか。そして、この研究が進むことで、我々にとってどんなメリットがあるのだろうか?
研究グループのメンバーの一人である富山大学和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野 准教授の小泉桂一さんに詳しく話を聞いてみた。

健康状態から病気状態になる直前に“生体信号”が大きく変化

――そもそも今回の未病の研究を始めるきっかけは?

未病状態において予防的・先制的医療介入を行うことで、その発症や重症化を未然に防ぐ手段の確立が、社会的に強く求められています。
すなわち、平成29年2月の閣議決定にもあるように、未病研究は、国としても重要な政策課題と位置付けられています。
しかしながら、この未病という考え方はこれまでは経験知に基づく概念的なものであり、その存在は科学的には証明されていませんでした。
従って、未病を科学的に解明し、さらには、全く新たな医療戦略を構築するための一歩として、この研究を始めました。 


――どのようにして未病状態だと判断する?

我々、研究チームは、生体信号の揺らぎに着目した「動的ネットワークバイオマーカー理論(DNB)」から揺らぎが大きくなった時点を未病の状態であると考えました。


――DNB理論って何?

簡単にいうと、健康状態から病気状態になる直前に、種々の生体信号が大きく変化すると考える理論です。

DNBのイメージ図がこちらです。


黒丸をボール、窪みを谷、上を山頂と考えてください。
健康状態では、ボールは谷にありますので、揺すっても(外界からの力=今回は病気になる力)、谷でゴロゴロ転がり、しばらくすると安定します。これが、健康状態(=安定状態)です。

病気の方に向かうと、ボールは山頂に登ります。これが未病状態(=不安定状態)です。
揺すると(外界からの力=今回は病気になる力)、山頂から簡単に、疾病状態(=安定状態)の谷に転げ落ちます。
このように疾病になると言う理論です。

ここでポイントがあります。
この未病状態(=不安定状態)では、まだ、健康状態(=安定状態)の谷にも転げ落ちることができます。
すなわち、健康に戻ることのできるタイミングということです。
この健康に戻ることのできるタイミング(=未病状態)に対する医療を作ろうというのが、未病の研究を始めるきっかけにつながります。

――それでどんな実験を?

生後8週から10週でメタボを発症するマウスで、1週間ごとに脂肪組織の遺伝子を解析。
DNA(デオキシリボ核酸)の情報を複製したRNA(リボ核酸)が生み出される量を測ってデータ解析しました。


――どんな結果に?

5週目のマウスのRNAの量の増減幅が通常の3~4倍になり、5週目にDNB理論で考える未病の状態になっていることがわかりました。

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