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【デキる人の健康学】有酸素運動でアルコールによる肝障害が軽減(産経新聞)

先週のコラムで運動強度が高くなると運動の割に消費カロリーが増えないという最新情報を紹介した。研究チームの解析によると、運動によって体の炎症が抑えられ免疫系の細胞が無駄に使っていたカロリー分が減少した可能性が示唆された。

 もし、運動により炎症が抑えられるなら、慢性的なアルコール摂取による肝臓の炎症や肝障害も軽減するかもしれない。米国ミズーリ大学医学部消化器病学のニコラス・スザリー博士らの研究チームはネズミの実験で有酸素運動がアルコールの慢性的過剰摂取による肝障害を軽くする可能性を示唆して話題を呼んでいる。

 米国では毎年8万人が過度のアルコール摂取により肝硬変などの疾患で死亡していると報告されているが、死亡に至らなくても多くの人が慢性的なアルコール摂取による脂肪肝や肝障害で治療を受けているのが現状だ。

 研究チームは高活動性ラット(別名ランナーラット)に注目した。このラットは恒常的に有酸素運動をする習性があり、通常のラットに比べて有酸素運動による健康メリットを研究できる良いモデルとなっている。

 スザリー博士らはランナーラットに6週間にわたりアルコールを摂取させ、肝臓の炎症、肝臓の糖代謝や脂質代謝を検討した。

 通常のラットにアルコールを6週間摂取させると、肝臓は脂肪肝を発症し炎症を起こすためインスリンの効きが悪くなり血糖値や中性脂肪が高くなる。しかし、ランナーラットは6週間アルコールを摂取した後、脂肪肝を発症したが、驚くべきことに血糖や中性脂肪が正常値でインスリンの効きが良いことが分かった。

 毎日アルコールを摂取する人でも定期的な有酸素運動を生活に取り入れれば、仮に脂肪肝を発症しても、肝臓のインスリンの効きを保持し血糖や中性脂肪を正常値に保つことが出来るかもしれない。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。