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マダニ媒介の日本紅斑熱、過去最多の患者数-昨年1年間の報告、厚労省が注意喚起も(医療介護CBニュース)

マダニから感染する日本紅斑熱の昨年の患者報告数が、感染症発生動向調査が始まった1999年以降で最も多かったことが、国立感染症研究所の患者報告で分かった。厚生労働省などは、同じダニ媒介感染症の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が国内で初めて報告された2013年以降、医師の関心が高まったことが報告数を押し上げた一因とみている。ただ、ダニ対策が不十分で罹患する人が少なくない上、今後ダニの活動期を迎えることから、野外で活動する際は長袖・長ズボンの着用や防虫スプレーの使用などを促している。【新井哉】

 日本紅斑熱は、日本紅斑熱リケッチアを保有するキチマダニやフタトゲチマダニなどに刺されることで感染する。2-8日ほどの潜伏期間を経て、高熱や発疹などの症状が出る。治療が遅れた場合、重症化して腎不全などで死亡することもある。感染症法の4類感染症(全数把握対象疾患)に指定されており、診断した医師が最寄りの保健所に届け出る義務がある。

 例年マダニが活動期を迎える4月ごろから患者の報告があり、7月から10月にかけて報告が増える。国内の報告数は、99年から2002年までは年間40人前後だったが、07年から増加傾向となっている。14年以降は年間200人以上の報告がある。

 昨年1年間の患者報告数は、これまで最多だった14年(241人)を上回る275人を記録。都道府県別では、三重が48人で最も多く、以下は広島(36人)、鹿児島(22人)、熊本(19人)、和歌山(17人)、島根(15人)、兵庫、愛媛、高知(各13人)、千葉(10人)、佐賀(8人)、香川と長崎(共に7人)、徳島、福岡、宮崎(各6人)などの順だった。

 ダニ媒介感染症のSFTSの患者が報告された13年以降、厚労省や自治体は医療関係者に対し、日本紅斑熱を含めたダニ媒介感染症の診断方法などの周知に力を入れている。例年患者の報告がある徳島県では、皮膚科の専門医だけでなく地元の医師会の医師など「かかりつけ医」の関心が高く、県立保健製薬環境センター(地方衛生研究所)に日本紅斑熱の症状や特徴などに関する問い合わせがあるという。

 日本紅斑熱の対応について、厚労省は、患者が死亡したケースがあることを踏まえ、「早期診断・早期治療が重要」と指摘。高熱などの疑わしい症状がある場合、すぐに医療機関を受診するよう呼び掛けている。また、ダニが生息する草むらなどで活動する際は、▽長袖や長ズボンなどで肌の露出を少なくする▽防虫スプレーを使用する▽帰宅後はすぐに入浴して体についたダニを落とし、新しい服に着替える-ことなどを挙げている。