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脳卒中の専門医療施設、厚労省が指標案-WGで都道府県の現状を独自調査へ(医療介護CBニュース)
厚生労働省は18日、循環器病の診療提供体制に関する検討会のワーキンググループ(WG)に、脳卒中の急性期診療提供体制の構築に向けた考え方を示した。2018年度からの次期医療計画を都道府県が策定する際、参考にしてもらうことなどが目的。専門的な医療を行う施設の考え方として、tPA療法(血栓溶解薬治療)の件数などの指標案を厚労省側から提示されたことを受け、WGは都道府県の現状を把握するため、独自に調査を行う方針を決めた。【新井哉】
■専門医療施設に直接搬送する体制が必要
6月に開かれた検討会で、厚労省は循環器病を診療する施設の役割について、▽高度な専門的医療を行う施設▽専門的医療を行う施設▽主に初期対応を行う施設-の3つに分類する案を提示。検討会の下に脳卒中と心血管疾患の2つのWGを設置して議論することを決めていた。 18日に開かれた脳卒中のWGの初会合で、厚労省は、脳卒中が緊急性や専門性が高い疾患であることに触れ、「確実に脳卒中疑い例を判別し、専門的医療を行う施設に直接搬送する体制が必要ではないか」などとし、病院到着前の体制や施設の選定に必要な評価項目に関する議論を促した。
長谷川泰弘委員(聖マリアンナ医科大神経内科教授)は、継続的な事後検証作業でtPA施行率の改善につなげた川崎脳卒中ネットワーク(KSN)の取り組みなどを紹介。全国的な課題として、搬送後の検証作業などが行われている地域が限られていることや、隣接する医療圏とデータを交換する仕組みが確立しておらず、圏域外への搬送データが欠落していることなどを挙げた。
■救急車受け入れの「応需率」を指標に
参考人として出席した横田裕行・日本医科大大学院教授(救急医学分野)は、脳卒中が疑われる患者の搬送体制の状況を説明。地域の脳卒中の診療提供体制の改善を図るため、救急車の受け入れ要請のうち何台受け入れができたのかを割合で示す「応需率」などを指標の項目に入れることを求めた。
こうした意見を参考にWGでは、厚労省が示した、SCU(脳卒中ケアユニット)や特定集中治療室(ICU)、手術室、CT、MRIといった施設・診断機器に関する項目に加え、▽tPA療法実施件数▽来院からtPA療法開始までに要した時間▽脳外科手術実施件数▽早期リハビリテーション実施件数▽地域連携クリティカルパスの導入―などの指標案について議論した。
厚労省が専門的医療を行う施設の役割に関して、「24時間体制でtPA療法が可能」と提案したが、委員からは、この条件に当てはまる施設が少ない地域が出てくることを危惧する声が挙がったほか、地域の治療施設を増やす観点から、高度専門医療施設よりも条件の緩い専門医療施設を増やすことを求める意見が出た。
地域の現状に即した役割分担や施設の指標を定めるため、WGで都道府県や二次医療圏内におけるtPA療法が可能な施設数などを把握し、今後の議論に反映させたい考えだ。次回の会合で脳卒中の回復期と慢性期の診療提供体制を検討した上で、10月上旬をめどに議論を整理し、検討会に報告する予定。