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脳年齢・脳ドック MRI画像をAIで解析、認知症を早期診断 同時に全身のがん検査も
【どこまで分かる その検査】
従来の脳ドックは、MRI検査で脳の血管異常や脳腫瘍の有無、脳萎縮の程度を調べるのが一般的だ。しかし、検査結果は「異常なし」「経過観察」「要精査」という形でしか提示されず、自分の脳の健康状態が被検者には分かりにくい。
そこで「新百合ヶ丘総合病院」(県川崎市)では、MRI画像をAI(人工知能)で解析して「脳年齢」を数値化できるシステムを導入。昨年8月から「脳年齢・脳ドック」という新たな専門ドックを開始した。同院の笹沼仁一院長(脳神経外科医)が説明する。
「脳の健康度を見る上で特に重要な尺度となるのは、記憶に関わる領域の『海馬(かいば)』の大きさ(萎縮度)です。脳年齢は、海馬の大きさが年齢相応かどうかをAI解析によって算出します」
このAIを用いた解析技術には、東北大学加齢医学研究所監修による日本人男女約3000人の脳画像の基礎データが使われているという。検査項目は、これらのMRI検査によるものだけではなく、タブレット端末を使った「認知機能テスト」も行われる。
また、脳年齢・脳ドックは、全身のがんを調べる「PET-CT検査(以下、PET検査)」とセットで行われることも大きな特徴だ。がん細胞が正常細胞よりブドウ糖を多く取り込む性質を応用した検査だが、脳はもともとブドウ糖が多く集まる部位なので脳腫瘍の検出は不得手とされる。では、脳の何が分かるのか。
「脳腫瘍などの有無はMRI画像で確認できます。PET検査で脳を撮影するのは、脳細胞はブドウ糖を栄養素として代謝するので『脳代謝』の状態が分かるからです。PET画像を専用ソフトで解析するのですが、認知症の早期診断にも有用とされています」
脳年齢・脳ドックは、MRI画像、脳年齢、認知機能テスト、脳代謝と、それぞれの結果を見ることで脳の健康状態が包括的に分かるという。加えて、体部のPET検査も同時に行うので、がん検診にもなるわけだ。
実際の検査の流れは、最初にPET検査(脳と体部)を行い、その後に脳MRI検査と認知機能テストを行う。所要時間はトータルで4時間ほど。検査結果は2~3週間後に自宅に郵送される。希望があれば外来で医師から直接、説明を受けることもできる。
「認知症を心配して脳ドックを受ける高齢者が多いのですが、がん検診を兼ねるので若い世代の人にもお勧めです。現時点の脳年齢が分かるので、定期的に受けることで将来の認知症予防に役立てられると思います」(新井貴)
【検査費用は?】 新百合ヶ丘総合病院の「脳年齢・脳ドック+PET-CTがんドック」(予約制)は11万円(税抜)。医師から結果説明を受ける場合の費用も含む。