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室内でも危険性のある「熱中症」 半数は高齢者…暑さ感じにくく重症化にも注意を(産経新聞)

高齢者は「熱中症弱者」とされ、発症リスクが高い。昨年、熱中症で救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が半数を占めた。炎天下の屋外で発症するイメージの強い熱中症だが、高齢者は室内で発症するケースが多い。梅雨明け以降に急増するため、注意が必要だ。(中井なつみ)

 ◆半数は高齢者

 「調理中に急にクラクラして気分が悪くなり、慌ててクーラーをつけました」。東京都内で1人暮らしをする女性(70)は昨夏、自宅で昼食を作っていたところ突然、めまいや吐き気を感じた。

 かかりつけ医を受診したところ、軽度の熱中症で脱水状態と指摘された。「まさか自分が熱中症になるとは。日差しの強い屋外にいたわけではないので油断していました」と振り返る。

 加齢などで暑さを感じにくくなっている高齢者は熱中症にかかりやすく、「熱中症弱者」とされる。総務省消防庁の統計では、平成27年に熱中症で救急搬送された約5万6千人のうち、65歳以上の患者は約2万8千人と半数を占めた。東京医大救急災害医学分野の太田祥一兼任教授(救急医学)は「自分は大丈夫、と対策を取っていない人が多い」と指摘する。

 ◆エアコンつけず

 熱中症は、高温多湿の状態で体温の調整機能などが正常に働かなくなり、体内に熱がこもってしまう症状。めまいや立ちくらみなどから始まる。重症化するとけいれんを起こしたり、意識を失うこともある。

 高齢者が特に注意したいのは、室内で発症するケース。症状がゆっくりと進行するため、気付いたときには重症化していることが多い。

 国立環境研究所(茨城県つくば市)のデータでは、昨年熱中症になった人のうち、7~18歳は運動中の発症例が最も多いのに対し、65歳以上は室内での発症例が最も多かった。太田兼任教授は「高齢者のお宅に伺うと、エアコンをつけず、長袖を着ている人が多い」と指摘する。

 こまめな水分補給と、高温多湿の環境を避けることが基本的な予防法だが、体を冷やしたくないとエアコンを使わなかったり、トイレの回数を気にして水分を控えたりする高齢者が少なくないという。太田兼任教授は「エアコンを嫌がる人には扇風機を勧めるなど個人の好みに合わせた対策が必要」と話す。

 ◆早期発見が重要

 熱中症を重症化させないためには、症状の早期発見と対策が重要だ。済生会横浜市東部病院周術期支援センターの谷口英喜センター長(麻酔学)は、「熱中症の初期症状である脱水を見逃さないことが、重症化を防ぐポイントの一つ」と話す。

 具体的には、手が冷たい▽舌や脇の下が乾いている▽腕の皮膚をつまんで、富士山の形が3秒以上戻らない-などが脱水症状が始まっているサイン。加えて、暑さが原因の体調不良が疑われる場合は速やかに医療機関を受診する。

 脱水症状を防ぐためには、「1日8回を目安に、タイミングを決めて水分補給を」と谷口センター長。筋肉が減ると体内の水分を保ちにくくなる。タンパク質を多く含む食事を心がけ、適度に運動することが効果的としている。

 ◆症状は3段階

 熱中症の症状は、重症度によって主に3つに分けられる。

 日本救急医学会の診療ガイドラインは、めまいや立ちくらみなどの症状がある1度は、体を冷やすなどの応急処置と見守りが必要。症状が改善しなければ、医療機関を受診する。頭痛や嘔吐(おうと)症状が表れる2度はすぐに医療機関を受診し、意識障害やけいれんが起きる3度は入院が必要としている。