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蚊媒介の黄熱、国内で輸入例発生する恐れも-感染研、全国の医療機関に渡航歴確認求める(医療介護CBニュース)

国立感染症研究所は、黄熱のリスクアセスメントを発表した。蚊が媒介する黄熱については、アフリカのアンゴラでアウトブレイクが発生し、3月には中国でも輸入例が報告されている。こうした状況を踏まえ、同研究所は、感染のリスクのある地域・国へ渡航した人が国内で黄熱と診断される可能性があると指摘。全国の医療機関に対し、患者の渡航歴の確認を徹底するよう呼び掛けている。【新井哉】

■年間死者6万人の感染症、アンゴラでアウトブレイク

 黄熱は、日本脳炎と同じフラビウイルス属のウイルスによって引き起こされる感染症。3-6日の潜伏期間の後、発熱や頭痛、嘔吐などの症状が出るが、ほとんどの患者は3-4日で回復する。ただ、毒性の強い「第2期」に移行した場合、口や鼻、胃などからの出血、黄疸、腎機能の悪化といった症状を伴い、死亡するケースもある。

 世界保健機関(WHO)の試算によると、年間8万4000人から17万人の患者が発生し、最大6万人の死者が出るとされている。日本国内では太平洋戦争後、輸入例を含めた黄熱の発生報告はない。

 特別な治療方法はなく、脱水や発熱などへの対症療法が中心となる。予防は黄熱ワクチンの接種が有効とされている。感染症法に基づく4類感染症に指定されており、診断した医師が最寄りの保健所に届け出る必要がある。感染拡大を防ぐ方法として、予防接種に加え、ウイルスを媒介する蚊の繁殖抑制が重要視されている。

 リスクアセスメントでは、2015年12月末からアンゴラでアウトブレイクが発生し、今年5月11日までに疑い例を含め2267人の患者が報告されていると説明。同国からの輸入例として、3月22日から5月4日まで隣国のコンゴ民主共和国で39例の患者報告があったほか、中国でも3月13日に国内初の輸入例が報告されたとしている。

■ワクチンの未接種者、海外で黄熱ウイルス感染の可能性も

 黄熱の国内発生のリスクや対応方法についても言及。ワクチンの未接種者がアフリカや南アメリカのリスク国・地域で蚊に刺されることで、「黄熱ウイルスに感染し、日本国内で黄熱と診断される可能性がある」と指摘している。

 こうした状況から、黄熱に感染するリスクのある地域・国への渡航歴があり、発熱があった場合は医療機関を受診することを要望。また、患者の早期治療につなげるため、医療機関に対しても渡航歴の聴取を徹底するよう求めている。

 一方、黄熱ウイルスを主に媒介するネッタイシマカは日本には生息していないことや、中国や米国、欧州で輸入例が発端となった国内感染が報告されていないことなどを挙げ、「国内で流行する可能性は低い」としている。