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高齢運転者が死亡事故、半数は認知機能関連-警察庁調査(医療介護CBニュース)

75歳以上の高齢運転者による死亡事故のうち、認知症の恐れ、または認知機能低下の恐れとされる人の過失による割合が増加傾向にあり、2015年にはほぼ半数に上ったことが警察庁の調査で分かった。同庁は昨年、高齢運転者による事故防止対策に向けたワーキングチームを設置。その下に有識者会議を設け、高齢運転者にかかわる詳細な事故分析を行って専門家の意見も交え、事故防止の方策を検討する方針だ。【室谷哲毅】

 現行の道路交通法では、75歳以上の高齢者は、3年ごとに免許更新時の認知機能検査を受けることになっており、そこで認知症の恐れがある者(第1分類)、認知機能が低下している恐れがある者(第2分類)、認知機能が低下している恐れがない者(第3分類)に分けられる。

 警察庁の調べによると、高齢運転者による死亡事故件数のうち、最も過失が重いとされる高齢者の認知機能検査の結果を見た場合、15年は第1分類と第2分類を合わせた件数の割合は49.4%とほぼ半数を占めた。過去3年間の推移は、13年は33.7%、14年は41.3%と急速に伸びている。15年の場合、第1分類が7.2%で13年の1.7%と比べ、4倍強に拡大。認知症の恐れのある高齢運転者による事故の割合が急増していることが分かる。

 また、認知症による運転免許の取り消し・停止処分件数は、15年は1472件で前年に比べ約5割増加。16年上期は909件で前年同期比4割増と、これも増加傾向にある。

 高齢化に伴い、75歳以上の運転免許保有者数も年々増加しており、17年末には500万人に達するとみられる。認知症などによる死亡事故も目立ってきており、15年時点で高齢運転者による過失で起きた死亡事故は、10万人当たり9.6件で75歳未満の4.0件の2.4倍と高いのが現状だ。

 現行の道交法は、第1分類と判定された者が、一定の違反行為をした場合に限り、医師の診断を受けてもらうことになっているが、3月から施行となる改正道交法では、第1分類の場合、一定の違反行為を行うかどうかに関係なく、医師の診断を受けることが必要となる。

 警察庁は、15年時点でのデータを基にシミュレーションを示した。それによると、認知機能受験者数は約163万人。そのうち第1分類と判定された者が約5万4000人に上り、約2割が免許を自主返納すると仮定して、残る約4万3000人が医師の診断を受けることになると想定している。

 これについて日本神経学会、日本神経治療学会、日本認知症学会、日本老年医学会の4学会は今月、内閣府や警察庁などに対し、認知症の進行に伴い運転リスクが増加するとしながらも、ごく初期の認知症の人や軽度認知障害の人と一般高齢者の間で運転行為の違いは必ずしも明らかでないとして、運転不適格者かどうかの判断は、認知症の診断に基づくのではなく、実車テストなどで運転技能を専門家が判断する必要があるなどと提言している。