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服であふれる認知症の義母の部屋…処分しない片付け方法〈連載「もめない介護」〉

認知症にはさまざまな予兆があると言われます。「片付けができなくなる」ことも、そのひとつ。整理整頓したい気持ちはあるけれど、片づけるための段取りが思い出せなくなることもあれば、片づけようと思っていたこと自体を忘れてしまうこともあります。

離れて暮らす義父母が立て続けに認知症だと診断されたときも、やはり義父母の自宅はなかなかの散らかりぶりでした。要介護認定を受け、訪問介護(ホームヘルプ)や高齢者向けのゴミだし支援(地方自治体が実施)を利用しはじめると、目に見えて部屋がきれいになっていきました。

ヘルパーさんの助けを得て、日常生活のなかで生じるゴミを捨てられるようになった影響が大きかったようです。一方、その後も長く、悩みの種となったのが洋服の問題でした。

「たくさん洋服があると、着替えのときに混乱しやすくなるので、数をある程度調整したほうがいい」
「季節にあったお気に入りの服だけを出しておくと、本人も着替えやすい」

周囲の介護経験者からアドバイスをもらい、なるほど!と思ったのですが、あいにく義母には「ドロボウが夜な夜な寝室を訪れ、洋服を盗んでいく……」という、“もの盗られ妄想”があります。

しかも、衣装持ちで押し入れクローゼットには、若い頃に着ていた仕事用のスーツや外出用のブラウスやワンピースなどがぎっしり。タンスもいくつかありましたが、まったく洋服がおさまりきらず、寝室のあちこちにたたんで積みあげてあるような状態でした。

母娘バトル勃発で、義姉へのお願いはあえなく断念

「片づけようとすると、母が怒るので無理」

当初、洋服の片づけは義姉にお願いするつもりでしたが、母娘バトルが勃発してしまい、あえなく断念。義姉曰く、「昔から、和室(寝室)はプライバシー空間だから入るなと言われていた」とのことで、洋服の片づけについてもピシャリと断られたそう。

義母にそれとなく尋ねても、「まだ肌寒くなるかもしれないし、もう少しこのままでいい」「片づけはそのうち、自分でやるからいい」と、なかなか首を縦に振ってくれません。

ただ、寝室に積みあげた洋服の山はたびたび崩れ、足の踏み場がなくっていることも少なくありません。ヘルパーさんから、デイ通いのための着替えを探すのに苦労した話も聞いています。さて、どうしたものか。

「あれこれ理由をつけて、洋服を処分されるんじゃないかって不安なんじゃないの? 『絶対に捨てませんから』って最初に約束しちゃったら?」

そうアドバイスしてくれたのは、わたしの母親でした。「おばあちゃんもそうだったよ。わたしだって、勝手に捨てられたらイヤだと思うもの」と、母は言います。

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