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【くらしナビ】おなかの健康、ヨーグルトで保つ(産経新聞)

■インフルエンザ、風邪…流行はピークに

 入試シーズンの最盛期となるこれからは、インフルエンザの流行もピークを迎える。免疫力の維持、向上を視野に入れた体調管理に努めたい。腸は免疫器官とも考えられ、おなかの健康を大切にして、歓喜のゴールを目指そう。(谷口康雄)

 ◆3月まで注意を

 医学博士で家庭医療を専門とする和田堀診療所(東京都杉並区)の樫尾明彦所長は「インフルエンザ流行のリスクは寒さと乾燥によって高まります。集団感染などで爆発的に流行することもあり、流行のピークは例年、1月から2、3月まで続きます」と注意を促す。

 風邪とは多くが自然に軽快するウイルス性上気道炎で、インフルエンザもその一つ。樫尾所長は「症状が自然に治まり、その時点で風邪と確定できるので経過を見守る必要があります。熱が上がってしぶといせきがあれば肺炎の危険性、喉の痛みが強ければ溶連菌感染症の疑いがあり、抗生物質(抗菌薬)が必要になる可能性があります」。

 さらに「抗生物質は定められた期間は服用する必要があります。インフルエンザ治療薬のタミフルやイナビルなどは症状の緩和を早めるというものです」とし、薬を使えば必ずしもすぐに治るわけではない。

 風邪やインフルエンザに対する注意点をまとめると表(上)のようになる。食欲があるなど比較的に元気であれば、安静にして、じんわりと汗をかくことも有用だ。「解熱剤は汗をかかせて熱を冷ますものです。一方で漢方薬の多くは体を温める薬です。体を温めることはお勧めできます」

 おなかの健康が大切で「腸は免疫器官としての役割も担っている可能性があります。東洋医学では、おなかを冷やさずに健康を保つことを治療の基本とする考えがあります」と樫尾所長。

 ◆感染防御に期待

 英国の研究では乳酸菌などの善玉菌を摂取することで風邪の症状緩和を早める働きがあることが報告されている。医学博士で京都大学名誉教授、武庫川女子大学(兵庫県西宮市)国際健康開発研究所の家森(やもり)幸男所長は25カ国61地域で疫学調査を行い、食と健康についての研究を展開している。家森所長はカスピ海と黒海に挟まれ、世界有数の長寿地域とされるジョージアから分析のためヨーグルトを持ち帰り、おなかの調子や免疫への効果を調べている。

 家森所長は「菌の表面で産生される粘性多糖体が免疫細胞に働きかけ、ウイルスなどを抑えるNK細胞の働きを高めます。球状で小さなクレモリス菌は桿棒(かんぼう)状(さおや円筒のような形)で大きな乳酸菌に比べて体積当たりの表面積が大きく、粘性多糖体の産生量も高く、粘り気の多いヨーグルトが免疫を高めるのでは」と解説する。インフルエンザのワクチン接種後の抗体価を調べ、クレモリス菌で作ったヨーグルトを食べたグループで抗体価の増加が大きいことも分かっている。

 クレモリス菌FC株はカスピ海ヨーグルトとして商品化され、フジッコ(神戸市中央区)が製造、販売を行っている。同社が産業技術総合研究所とともに発表したマウスを使った研究では、クレモリス菌FC株が免疫細胞に働きかけ、一般的なクレモリス菌より非常に強くインターフェロンの産生を高め、感染防御作用などの効果が期待されることを明らかにした。

 家森所長は「血糖値の急上昇を抑えて脳のエネルギーとなる糖の供給が持続し、集中力の維持も期待できます。魚介類とともに豆、雑穀、海藻、野菜、キノコやイモにヨーグルトで東西の長寿食がそろいます」と話している。