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【デキる人の健康学】カルシウムサプリメントに認知症リスク 食品から摂取を(産経新聞)
1日に必要なカルシウムの摂取量は650mgと言われているが、実際には男性で平均520mg、女性で489mgしか摂取できていないので、1日約130-160mgのカルシウムが不足している。
カルシウムは牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、そしてめざし、イワシなどの小魚、豆類や青梗菜や小松菜などの緑黄色野菜、ワカメや寒天などの海藻類に含まれている。
しかし、高齢期には食が細くなったり、消化管からの吸収が悪くなったりするので、サプリメントでカルシウムを摂取している高齢者も多い。しかし、サプリメントでカルシウムを摂取すると血中のカルシウム濃度が一時的に上昇するため認知症のリスクを高めていることが分かった。
スウェーデンのヨーテボリ大学精神神経疫学部門のユルゲン・カーン博士らの研究グループは、認知症のない70歳?92歳のスウェーデン人女性700人を対象に5年間追跡調査を行い、カルシウムサプリメントの摂取と認知症の発症リスクとの関連性を検討した。
観察期間中に新たに59名が認知症を発症した。認知症の発症はカルシウムサプリメント非摂取群では602人中45人(7.5%)だったのに対し、摂取群では98人中14人(14.3%)と約2倍の認知症のリスクがあることが分かった。さらに解析を脳卒中の既往のある女性108人に限ると、認知症の発症リスクがなんと6.77倍に上昇していることが分かった。
一方で脳卒中の既往がない女性はサプリメントを摂取しても認知症の発症リスクは上昇しなかった。カーン博士は血中カルシウム濃度が上昇することにより、脳の虚血性病変で神経細胞に細胞死が誘導されたり凝固能が亢進するなどの変化が起きているのではないかと考察する。高齢期にはカルシウムはサプリメントではなく食品から摂取した方が良さそうだ。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。