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腰痛持ち必見!! 「ヘルニアが原因」はほぼ間違い 心の問題に起因することも(産経新聞)
デスクワークが多くなり、現代病ともいえる腰痛を抱える人は多い。製薬会社などの調査では、慢性の腰痛で3人に1人が「仕事を辞めたい」と思ったことがあるという重大な病だ。しかし、患者と医師には治療をめぐって大きなギャップがある。長年診療に携わってきた浜松医科大教授の松山幸弘医師(整形外科)はその秘話を明かした。(天野健作)
■患者は治療に満足していない
腰痛で病院に来る人は風邪の患者よりも多いといわれる。ただ患者は治療に満足していない。
「われわれに反省すべき点があって、患者がもう来なくなったら、これでいいかなと思ってしまう。われわれの観察が足りないこともある」
松山医師は率直にそう認める。慢性の痛みは治療が非常に難しいが、患者は100%の完治を望む。だから患者満足度が低くなる傾向にあるという。
患者は満足しているかどうか医師に伝えない。
「尋ねても『まあまあいいです』といわれてしまう。恥ずかしいことだが、慢性の痛みはつかみどころがない。どこから痛みが来ているかの特定は難しい」。松山医師はそう指摘する。
問題は、患者が聞いている診断名と医師が考えている診断名が、かけ離れていることだ。
「患者はよく腰痛の原因を『ヘルニア』というが、ほかの病名はその場でいわれても覚えていない。本当は『変形性脊椎症』が多い。慢性腰痛でヘルニアは少ない。患者が覚えやすいからヘルニアといってしまう」。松山医師はそう明かした。
腰痛の原因は脊椎だけでなく、神経や内臓、血管などいろいろあり、ヒステリーや鬱病など心の問題から来ることもある。
心から来る腰痛はさすがに、形成外科医には対処できない。
■「家族や職場に迷惑をかけ辛い」
数値が松山医師の証言を裏付ける。
塩野義製薬と日本イーライリリーが、全国2350人の慢性腰痛症患者の意識・実態調査を実施した。
痛さがひどく、仕事を辞めようと考えた人は35・2%、実際に辞めたことがあると答えた人は、16・4%に上った。
さらに、半数以上が趣味や外出にも影響しており、6割が「家庭や職場に迷惑をかけ辛い」と感じている。
病院に行っているにもかかわらず、調査では治療に満足している患者が42・2%で、半分もいない。医師が思っている以上に満足していない患者の方が多いのだ。
その理由として最も多いのは、「期待していた鎮痛効果が得られなかったから」というのが一番多くて、72・1%。そのほか「医師以外による治療の方が効果を感じられるから」(25・2%)、「原因や治療に関する説明が不十分だから」(24・3%)と続いた。
■湿布は慢性腰痛に意味がない
治療にもギャップがある。民間療法やマッサージに頼る患者も多い。
松山医師は「私たちは医者であり科学者だ。マッサージがどれだけ効果があって治療に有効か、データがない。私たちは科学的根拠があることしかやらない。ただマッサージは時間をかけてやってもらえ、よく話をする。その時点でわれわれは負けており、患者と向き合う必要がある」と述べた。
患者は医師によく湿布薬を求めることが多い。
松山医師によると、湿布は炎症を止める薬が入っている痛み止めでしかない。急性期には効くが、慢性期に使っても意味がない。慢性期でむやみやたらに湿布を出すことはないという。
総じて問題は、医師と患者のコミュニケーション不足だ。互いによく話し合い、治療のゴールを決めることが必要。蔓延(まんえん)する腰痛の克服は、社会の病を治すのと同じであろう。