介護・医療関連ニュース
-
低栄養、あらゆる世代に潜むリスク 偏食、急激なダイエットも引き金に(産経新聞)
飽食の時代といわれて久しいが、最近では必要な栄養を摂取できていない「低栄養」の人も増えているという。高齢者に目立つほか、偏食や急激なダイエットが引き金になる場合もあり、あらゆる世代に低栄養のリスクは潜んでいる。知らず知らずのうちに健康をむしばんでいくので注意が必要だ。(財川典男)
低栄養とは、健康維持に必要なエネルギーやタンパク質などの栄養素が欠乏した状態をいう。低栄養かどうかを判断する一つの目安に、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)がある。BMIが20以下なら低栄養のリスクが高い。
◆消化機能の衰え原因
「原因不明の体重減少が続くのは要注意」と話すのは、悠翔会在宅クリニック柏(千葉県柏市)院長の佐々木淳さん。最近3カ月間で食事量が少なくなり、体重が3キロ以上減った場合には低栄養の疑いもあるという。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成26年)では、65歳以上の高齢者の2割近くが低栄養傾向とされる。高齢者は、かむ力や消化機能が衰えて食も細くなりがち。あっさりとした食事を好み、エネルギーや肉類などのタンパク質も不足しやすい。
調査会社のトレンド総研(東京都渋谷区)のアンケートでは、高齢になると食事の量や内容が変わる人も多い一方で、低栄養の認知度はまだ低い。知らないうちに低栄養に陥る恐れがありそうだ。
管理栄養士の中村育子さんによると、高齢者の1人暮らしや夫婦だけの世帯では買い物などの外出が減り、パンや麺といった簡単な食事で済ます例も多い。「低栄養で活動量が低下し食欲も落ち、さらに外出しなくなる『負のスパイラル』を招く」と警鐘を鳴らす。
さらに若者や中年世代らも低栄養のリスクと無縁ではない。スリム志向や生活習慣病を改善するための急激なダイエットが逆に偏った食事につながり、栄養状態の悪化を招く恐れもあるからだ。
低栄養の怖さは、「痩せているほうが健康的」と誤解して気付かないうちに進行し、さまざまな病気につながることだ。
佐々木さんは「骨や筋肉の衰えだけでなく、免疫力の低下で感染症にかかりやすくなる」と指摘。高齢者であれば認知症のリスクも高まり、要介護状態になりかねないという。
◆加工食で手軽に補助
佐々木さんによると、1日に必要なエネルギーとタンパク質は年齢や性別、運動量などによって左右される。中年期以降の人で運動量が少ない場合は、大まかに次の計算式で分かる。エネルギーは、標準体重(キロ)×25キロカロリー、タンパク質については同×1グラムだ。
標準体重は身長(メートル)の2乗×22で算出できるため、身長170センチの人であれば約63・6キロ。エネルギーは1590キロカロリー程度、タンパク質は約63・6グラムとなる。
ちなみにタンパク質の目安は「標準体重40キロの高齢者のケースで1日に卵1個、コップ1杯の牛乳、サケの切り身1切れを摂取すればよい」と試算。買い物に出かけにくい場合は「サバの缶詰といった保存がきく加工食品をうまく活用したい」とアドバイスする。
一方、中村さんは「低栄養の予防には缶詰や冷凍食品などの加工食品に加えて、必要な栄養素やエネルギーがとれる栄養調整食品がドラッグストアなどで手軽に手に入るようになったので、食事の補助として活用したい」と提案している。