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【デキる人の健康学】両親が長寿は有利 喫煙、認知機能と長寿の間に因果関係(産経新聞)

この世の中で最も長生きしたフランス人女性、ジャンヌ・カルマンさんは122歳まで生きた。1995年に生まれ故郷の南仏のアルルの街で120歳の誕生日を元気な姿でお祝いした映像が残っている。

 最後までユーモアの精神を忘れなかったカルマンさんは、「長生きの秘訣は何ですか?」とのメディアからの質問に対し、「私は、生涯一度も病気をしなかったのよ!」と明快に答えて有名になった。

 120歳まで認知機能を保っていたカルマンさんのご両親も長寿だったと記録されている。カルマンさんはまさに長寿家系の出身だったと言える。

 双生児の研究から寿命を決める要因の25%が遺伝要因であることが知られているが、どのような遺伝子が長寿をもたらしているのだろうか。

 英国エクセター大学医学部疫学部門のデービット・メルツアー博士らの研究チームは英国バイオバンクに登録された7万5千人のデータを対象に親の寿命と疾患リスク遺伝子との関連性を検討した。

 その結果、長生きの両親を持つ人は冠状動脈疾患、収縮期高血圧、BMI(肥満度)、コレステロール、中性脂肪、1型糖尿病、炎症性腸疾患やアルツハイマー病などに保護的に働く遺伝子多型の保険者が多いことが分かった。

 また、母親が98歳以上、父親が95歳以上の1339超長寿家系に対象を絞り込むと、さらにHDLコレステロール遺伝子の関連性が明らかとなった。

 興味深いことに、これまで喫煙と肺癌の関連性が報告されていたニコチン受容体遺伝子が父親の長寿に関連していることが新たに分かった。カルマンさんは120歳までタバコを吸い続けたが肺癌にはならなかった。

 肺癌を発症しない喫煙者に長寿傾向が認められるのかさらなる解析が必要だが、ニコチン受容体がアルツハイマー病の治療薬のターゲットであることを考えると、喫煙、認知機能と長寿の間に何らかの因果関係が見出されるかも知れない。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。