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食事に気を付けても「脂質異常症」改善しない… 「家族性高コレステロール血症」の疑いも 食と健康・ホントの話
【食と健康 ホントの話】
健診で「脂質異常症」と指摘されたことはあるだろうか。特定健康診査(メタボ健診)を受ける40歳以上なら、身に覚えのある人は多いはずだ。
健診で見つかったのち特定保健指導を受けて、食事や運動を見直す生活改善の指導を受けたことがある人もいるだろう。指導を無視して脂質異常症が改善していない人は、もちろんすぐに生活改善に取り組んでほしい。
しかし、食事に気を配っているにもかかわらず、血液検査の数値が一向に改善しない場合は、一度「家族性高コレステロール血症(以下FH)」を疑ってほしい。FHは遺伝的にコレステロールが高くなる病気だ。LDLコレステロールを肝臓で取り込む受容体に関係する遺伝子などに異常があるためで、若いときから動脈硬化が進む。
今月2日に行われた動脈硬化教育フォーラムの市民公開講座で、東京女子医科大学循環器内科の佐藤加代子准教授は、FHであることに気が付かず、治療に入っていない人は少なくないと訴える。
「この病気で有名なのは、水泳金メダリスト、北島康介選手のライバルだったノルウェーのダーレ・オーエン選手です。彼はFHによると思われる動脈硬化から心筋梗塞を起こし、26歳の若さで亡くなっています。薬物治療のスタンダード薬であるスタチンの筋肉への影響を心配して服用していなかったそうです」
FHの人は脂質異常症の人よりもずっと早く、心筋梗塞などの冠動脈疾患になりやすい。そのため、早いうちからの厳格なLDLコレステロールのコントロールが必要だと佐藤准教授は話す。
FHの診断基準は次の通り。2つ以上当てはまる場合は、日本動脈硬化学会ウェブサイトの「家族性高コレステロール血症の紹介可能な施設一覧」に掲載の医療機関を受診してほしい。
(1)未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上である
(2)皮膚や腱に黄色腫(脂肪の塊)がある
(3)2親等以内の親族(両親、祖父母、子供、叔父、叔母)で以下に当てはまる人がいる
〔1〕LDLコレステロールが180mg/dL以上
〔2〕若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている(男性55歳未満、女性65歳未満)
とくに(2)の黄色腫については、誰でも見てわかる状態なので、ぜひ確認を。皮膚なら肘やひざ、手首、お尻などに、大きないぼ状のものがないか確認したい。アキレス腱は太っている人でも細いが、これが太い場合はFHの可能性がある。
もう一つ、診断基準にはないが、「角膜輪」という黒目に灰色から白い枠がみられるとFHの疑いがある。「若い人は上方に現れることが多い。自分では見づらいので誰かに確認してもらうといいでしょう」
自分がFHかどうか、(3)の〔2〕のような親族の有無も確認を。
FHは、父と母からもらったLDL受容体に関わる遺伝子の両方、あるいは片方に異常がある。両方の遺伝子に異常がある場合を「ホモ接合体」、片方を「ヘテロ接合体」と呼ぶ。後者は200~500人に1人の割合で存在する。にもかかわらず、見逃されていることが多い。
次回はFHの治療法と、脂質異常症を予防する食事について。(医療ジャーナリスト・石井悦子)