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【くらしナビ】糖質は体に必要な栄養素 血糖値の急上昇抑えることが重要(産経新聞)

糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質の3大栄養素は不可欠なエネルギー源で食生活の基本となる。食べ過ぎはもちろん、過度な制限も要注意だ。血糖値を急激に上げないことが重要で、満腹感や集中力の持続にもつながる。(谷口康雄)

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 食物学の学術博士で日本獣医生命科学大学客員教授の佐藤秀美さんは「ご飯を主食に糖質をエネルギー源の中心とし、みそ汁などの汁物に、おかず3品をそろえる一汁三菜の献立はバランスよく栄養を取る目安として役立ちます」という。

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で3大栄養素の望ましい摂取割合が示されており、佐藤さんは「厚労省の平成26年『国民健康・栄養調査』から18歳以上の摂取割合は現状の食生活では基準の範囲内に収まっています。糖質制限ダイエットなどは栄養バランスを崩す恐れがあります」と指摘する。

 佐藤さんは日本人の食の動向を踏まえ、穀類、芋類、菓子類などの糖質を肉や魚、油に置き換えて表1のような試算結果を得た。脂質が大幅超過し、タンパク質も多い。タンパク質が20%を超えると糖尿病、がんのリスクが高まり、飽和脂肪酸が7%超で心筋梗塞の発症リスクが増加するとされる。

 「糖質制限ダイエットは食べる量を抑えただけの可能性があります。行き過ぎれば栄養不足に陥ります。全身の構成材料、酵素、免疫物質などになるタンパク質と、細胞膜の構成成分、生理活性物質になる脂質を一定以上、エネルギーに回すことは避けるべきです」と注意を促す。さらに「血糖値を急激に上げないことが重要。変化が大きいほど糖質が細胞内に蓄積され、肥満につながります」という。

 「煮豆なら砂糖を完全に染み込ませず、味を最初に感じる表面に甘さが付けば一度に取る糖分を抑えることができます」と調理の工夫も大切とし、「血糖値を上げにくい糖類もあります」という。

 精糖最大手の三井製糖(東京都中央区)は、砂糖(ショ糖)に比べて血糖値の上昇が緩やかなイソマルツロースの開発、販売を手がける。パラチノースの名で製品化され、学術論文などで物質名のように扱われている。同社商品開発部の奥野雅浩課長は「パラチノースはショ糖と同様、ブドウ糖と果糖がつながった二糖類で、結合位置だけが異なります。カロリーも1グラム当たり4キロカロリーと同じで、ショ糖を酵素で反応させた後、精製します」と説明する。

 兵庫医科大学の病院長で糖尿病・内分泌・代謝科前主任教授の難波光義さんらの実験では、ショ糖は血糖値(グルコース)が急激に上下するのに対し、パラチノースは緩やかに上昇し、適切値で長く持続する。血糖値を下げるホルモンのインスリンの量も急変しない。

 奥野課長は「ショ糖はスクラーゼで分解されるのに対し、パラチノースは同じく小腸内にある酵素のイソマルターゼで分解されます。分解速度は前者の5分の1と遅く、血糖値の変化も緩やか」と話す。運動時の低血糖予防や運動後の脂肪燃焼維持、集中力の持続も優れていることが確認されているとし、「満腹を感じさせるホルモンで糖尿病の治療にも使われるGLP-1も、パラチノースが分泌を促進することが明らかになっています」という。

 同社では砂糖と同量を配合した商品をインターネットで販売している。奥野課長は「パラチノースを糖質の15%以上加えることでショ糖などによる血糖値上昇も抑える効果が表れます。砂糖と同量とすることで通常の料理レシピが使え、つや、照りなど砂糖ならではの繊細さも楽しめます」と話す。