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【デキる人の健康学】果糖は脳に炎症を惹起し記憶力低下もたらす(産経新聞)
果糖(フルクトース)は蜂蜜や果実、メロンやある種の根菜に含まれている単糖である。グルコースに比べて血糖を上げる作用が弱いために健康的な糖質との評価もあったが、一方で中性脂肪の値を上昇させる効果があり心臓病の発症要因になるとの警鐘も鳴らされていた。
現代人の摂取する果糖の供給源の多くはコーンスターチから生成される安価な甘味料である果糖ブドウ糖液糖(別名、異性化糖)で、コンビニやスーパーに置いてあるスポーツドリンク、ゼリー、アイスクリーム、シリアル、ノンアルコールビールなどの商品に幅広く使われている。
最近では、心臓病だけでなく、アルツハイマー病や注意欠陥多動性障害などの神経・精神疾患との関連性が示唆されている。
米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のフェルナンド・ゴメツピニラ博士らの研究チームはラットを使った実験で、果糖が直接的に脳の神経細胞に作用し遺伝子発現を変容させている可能性を検討した。
研究チームはアルツハイマー病や注意欠陥多動性障害などの脳疾患で発症に重要な役割を果たしている海馬と視床下部に注目した。人に換算すると1日1リットルの炭酸飲料に相当する量の果糖溶液をラットに6週間摂取させた後に迷路試験を行った。
その結果、果糖を摂取した群のラットは記憶力が低下し、迷路を解くのに通常の2倍の時間を必要とした。遺伝子を調べると、視床下部で700以上、海馬で200以上の遺伝子が異常な発現パターンを示していた。これらの遺伝子には代謝や細胞間のコミュニケーション、炎症の調整に関わる遺伝子が多数存在した。
興味深いことに、果糖とオメガ3脂肪酸であるDHAの両方を摂取した群では、記憶力の低下や遺伝子発現異常は観察されなかった。DHAが果糖による脳障害の特効薬になる可能性があるとゴメツピニラ博士は示唆する。脳のためには果糖を減らして青魚の摂取を増やすのが良さそうだ。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。