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嗅覚障害 生活に影響…服薬・嗅ぐ訓練で改善も
嗅覚障害は、においが感じにくくなる病気だ。悪化すると、食事の楽しみが減るなどして、生活の質(QOL)が低下するだけでなく、時には命に関わることもある。原因や治療法などをまとめた。
大脳が認識できず
鼻から吸い込んだにおいの分子は、 鼻腔びくう を通り、その天井にある粘膜に到達する。粘膜には嗅細胞のセンサーが並んでいて、分子がくっつくと電気信号が作られる。この信号が脳の嗅球(きゅうきゅう)を経て大脳に届くと、においが認識される。この間にトラブルが生じることで起きるのが、嗅覚障害だ。
障害には主に三つのタイプがある。最も多いのが、におい成分の通り道が詰まり、嗅細胞に到達しなくなる「気導性」障害だ。副鼻腔(びくう)炎やアレルギー性鼻炎などに伴って起こる。
嗅細胞に問題が起きる「嗅神経性」障害は、風邪などのウイルス感染が原因となる。脳挫傷やパーキンソン病、認知症など、脳や神経の病気が引き金となる「中枢性」障害もある。
食べ物の味は、嗅覚の情報も影響するため、においを感じられないと、味が分からなくなることもある。食べる楽しみが減り、QOLが低下すると、認知症のリスクも高まるとされる。
また、ガス漏れや腐った食べ物などの異臭に気づきにくくなれば、危険から身を守ることが難しくなるおそれもある。
嗅覚障害かどうかを調べる検査には、基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査がある。前者は濃度を変えた5種類のにおいを嗅ぎ、感じ方の違いを調べる。後者はニンニクのような香りのついた液体を腕に注射し、においを感じる時間などを調べる。
これに問診の結果なども含めて、嗅覚障害のタイプや程度などを判断する。嗅覚障害と診断されたら、原因となっている病気を治療し、症状を改善することを目指す。
気導性は、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンなどの働きを抑える飲み薬や、炎症を抑えるステロイドの点鼻薬などを使う。副鼻腔炎を繰り返す場合、鼻の空洞同士をつなげる手術も選択肢となる。
嗅神経性では、神経の働きを助ける漢方薬を使うことがある。嗅覚を刺激するのも有効だ。1日に3回程度、10秒間くらいずつが目安。食事の際、おかずのにおいを嗅ぐようにすれば、手軽に続けられる。
中枢性の場合、脳や神経の病気が障害の原因となっており、治療が難しいケースが多い。鼻炎 きちんと治療
人間の嗅覚は20~30歳代がピークで、その後は年齢とともに衰えていく。加齢に伴い、嗅覚障害は発症しやすくなる。
確実に予防できる方法はないが、日常生活で意識して様々なにおいを嗅ぎ、風邪をひかないように規則正しい生活を送ることや、副鼻腔炎や鼻炎が見つかったら、放置せずにきちんと治療を受けることが大切だ。
兵庫医科大准教授の都築建三さんは「かつては治らないといわれた嗅覚障害だが、研究が進み、原因によっては治療が可能になった。早期の治療が重要なので、周囲の人とにおいの感じ方に違いがあるなど、自覚症状がある場合は、近くの耳鼻咽喉科に行って相談してほしい」と話している。(松田俊輔)