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シニア世代を中心に人気高まる「スポーツ吹矢」…健康増進、仲間づくりにも(産経新聞)
シニア世代を中心に「スポーツ吹矢」を始める人が増えている。動作に腹式呼吸を取り入れた競技で、心身の健康維持に最適。競技者同士の交流も盛んで、仲間づくりのきっかけとしても人気が高まっている。(玉崎栄次)
◆求められる集中力
7月中旬、スポーツ吹矢の全国大会が開かれた東京・錦糸町の墨田区総合体育館。選手らが的の手前に立つたび、水を打ったような静寂が訪れる。広島県呉市から夫婦で参加した無職、宇吹(うすい)新次さん(64)は狙いを定め一気に息を吹いた。「プシュッ!」。矢は的に命中した。
「正確に的を射とめるには、高い集中力と洗練された技術が必要」と宇吹さん。矢は時速100キロ以上のスピードになり、構えのわずかな傾きで的を外すことも。練習を欠かさず、週5回以上は的に向かう。
日本スポーツ吹矢協会(本部・東京都中央区)は審査会を設け段位を認定している。宇吹さんは最高位の六段を保有。妻の悦子さん(65)も五段の腕前で「目標は前例のない夫婦ともに六段獲得」という。
◆ハワイにも支部
スポーツ吹矢は、心身のリラックス効果があるとされる腹式呼吸を取り入れた競技だ。
吹き矢の歴史は古く、江戸時代の文献にも遊技の一つとして紹介されている。平成10年に協会を立ち上げた創設者の書店経営、青柳清氏(故人)は健康づくりのため、生活に腹式呼吸を取り入れたが、長続きしなかった。「無理なく腹式呼吸を続けられるように」と、吹き矢のゲーム性に目を付けたという。
競技人口(協会員数)は年々増え、5月末現在で約4万8千人(男性約2万4千人、女性約2万4千人)。47都道府県に計1093支部が設立され、ハワイやタイ、マレーシアにも広がっている。
同協会の中村一磨呂理事長(73)は「特別な体力や筋力を必要とせず、練習のため外出するきっかけにもなる。高齢者の健康寿命を維持するための『生涯スポーツ』にぴったり」。
◆「第二の青春」
「競技を離れて仲間と楽しむイベントも醍醐味(だいごみ)。第二の青春を謳歌(おうか)しています」。こう話すのは、千葉県富里市の支部に所属する宮久保幸雄さん(70)。大手航空会社を定年退職後、「仲間づくりのため」に競技を始めた。
宮久保さんの支部には、西洋料理の元シェフや、引退した高校教諭らさまざまな経歴のメンバーが集まる。合同練習は週3回だが、週末に仲の良いメンバーでブルーベリー狩りに出かけたり、料理教室を企画したり親睦を深めている。
一方、個人競技が中心のため、大会や練習への参加が強く求められることが少ないのも、この競技の特徴。そのため「集団競技よりもメンバーの結びつきが緩やかとなり、ストレスを感じにくい」(同協会広報部)といい、良好な人間関係を維持しやすいのも人気の理由となっている。
■「スポーツ吹矢」のルール
競技で使うのは、直径1.3センチ、長さ1メートル20センチの筒と、長さ20センチ、重さ1グラムの矢。的は直径24センチで、3センチ刻みに円が描かれており、矢が当たった場所によって外側から1、3、5、7点を獲得。的の手前5~10メートルの場所から、1ラウンド原則5回矢を吹いて合計点を競う。