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「有酸素運動・筋トレ・ストレッチ」のメリット&デメリット
「運動は健康に良い」というのは、ほぼすべての人の間に広まっている共通認識。でも、実際にどんな運動が何に良いのか、どのぐらいの時間をかけて運動すれば良いかまでを、把握している人は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は、株式会社タニタヘルスリンクの公認スポーツ栄養士・健康運動指導士で、競歩の岡田久美子選手へのコンディションサポートを担当している堀越理恵子さんに話を伺いました。堀越さんによると、運動には「有酸素運動」、「レジスタンス運動(筋力トレーニング)」、「柔軟運動(ストレッチ)」という3つタイプがあるとのこと。この3大運動には、それぞれメリットとデメリットがあり、その特性を知った上で運動することが大事のようです。有酸素運動の効果
酸素を消費して脂肪や糖質を燃焼させて、それをエネルギー源とする運動が有酸素運動です。運動としては、低〜中強度くらいの運動強度のため、長い時間継続ができます。
有酸素運動にはウォーキング、ジョギング(ランニング)、水泳、サイクリング、エアロビクスなどがあります。比較的すぐに始めることができ、普段の生活に取り入れやすいのが魅力です。
運動強度が低い場合、運動を継続するために、脂肪が主なエネルギー源となります。そのため、体脂肪燃焼が期待できるのが、有酸素運動の最大の健康効果と言えるでしょう。肥満や生活習慣病の予防や改善などに効果が見込めます。また、有酸素運動では心拍数が徐々に上がり、呼吸や血流が促進されます。そのため、呼吸器や循環器を鍛えられ、心肺機能を高める効果が期待できます。一方で、運動強度の低いウォーキングなどは、筋力アップや持久力アップにつながりにくいともいえます。
レジスタンス運動(筋力トレーニング)の効果
レジスタンス運動では、筋肉に抵抗(力)を加える動作を繰り返して行います。これにより筋力や筋持久力を高めることができます。筋肉を太く、大きくすることで、筋肉量の増加にもつながります。主なレジスタンス運動としては、自重をいかしたスクワットや腕立て伏せ、腹筋のほか、ダンベルやマシンを使ったトレーニングなどがあげられます。
レジスタンス運動では筋肉を増強することで、基礎代謝量が増加します。筋肉は血糖値の調節を行なっているので、筋肉量の増加は、血糖値を安定させることにつながるといえるでしょう。もちろん、メリハリのあるボディを手にしたい方にはオススメです。また、筋肉量のある強い体は、老齢での転倒や骨折、寝たきりになるリスクを低減します。一方、強度の高すぎる(負荷が高すぎる)レジスタンス運動は、呼吸を止めて行うと血圧の急上昇を招き、高血圧の人には大きなリスクにつながります。レジスタンス運動の強度設定には、健康運動指導士などへ相談するなど、注意が必要です。
柔軟運動(ストレッチ)の効果
柔軟運動は関節を曲げ伸ばしすることで、からだの柔軟性を高めたり、関節の可動域を広げることを目的とする運動です。柔軟運動には、動的ストレッチと静的ストレッチの2つがあります。
手首をほぐしたり、関節の動きをよくするなど、体を動かしながら柔軟性を高めていくものを動的ストレッチといいます。運動前に行うことで、筋肉の温度を上昇させ、ウォーミングアップにつながります。そして運動後には、反動をつけず筋肉を伸ばしたまま静止する、静的ストレッチを行うとよいでしょう。血流の流れを促進させ、身体をクーリングダウンさせていきます。ストレッチを行うと筋肉をほぐすことができ、血流がよくなります。運動前に動的ストレッチを行うと、運動中の怪我の予防、パフォーマンスの向上、運動に対しての心構えや心理的な準備につながるでしょう。運動後の静的ストレッチでは、自律神経のバランスをコントロールする副交感神経の働きが活発になります。体を動かしていても血圧や心拍数が下がり、心身がリラックスします。疲労回復や筋肉痛の予防などに効果があり、就寝前やリラックスしたい時にもオススメです。
3タイプの運動が、最大限の健康効果を発揮する運動量の目安は?
上にあげた3大運動の効果を十分に引き出すためには、自分の体力や身体的環境、目指したい目的に合わせて、各運動量を調整していきます。
「痩せたいから、有酸素運動をがんばりたい!」という方は多いと思いますが、有酸素運動を長く行うためには、筋力も必要です。有酸素運動を効果的に継続するためには、レジスタンス運動と組み合わせるとよいでしょう。また、レジスタンス運動を高い負荷で行う際には、運動前後のウォーミングアップや、クーリングダウンなどの柔軟運動が欠かせません。怪我の予防や疲労回復、緊張と弛緩の心身のバランスを取ることで、レジスタンス運動の効力アップにもつながります。このように、それぞれ効果や目的が異なる3タイプの運動の性格を見極め、目標に応じて運動を組み合わせたり、時間や強度の調整をすると、より大きな効果を引き出すことができます。
以下は、3タイプの運動の各効果を基本に考えた時の、運動の仕方の目安です。【有酸素運動】
できる範囲の継続時間から始めて、それを毎日継続させることが重要。
【レジスタンス運動】
各部位で10〜15回程度の回数を自分のレベルに合わせて反復する。
1日おきの実施など、週に3〜4回程度を目安とする。
トレーニングによる筋肉の修復も考えて、同じ部位を鍛える場合は1日、間隔をあける。
【ストレッチ】
運動する前後に実施することが重要。また、からだの凝りが気になる時やリラックスしたい時、起床時や就寝前などに効果的。[監修者プロフィール]
堀越理恵子(ほりこし・りえこ)
株式会社タニタヘルスリンク公認スポーツ栄養士・管理栄養士、健康運動指導士。大学の陸上競技部の栄養アドバイザーや、実業団選手の栄養マネジメントなどを担当。選手が安心して試合に挑めるようなサポートや、引退後の食生活にも活かせるような栄養教育を心がけている。スポーツ栄養マネジメント以外に、健康セミナーの講師や健康に関するカウンセリングに携わる。今年から、競歩の岡田久美子選手へのコンディションサポートを担当。
【公式サイト】http://www.tanita.co.jp/press/detail/2017/0818/
<Text:岸田キチロー/Photo:Getty Images>
※本記事は2019年1月13日にMELOSで公開された内容を再編集したものです。