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「大腸がん」も悪化させる口腔内の病原体! 除去する方法は… 必読!口と腸と生活習慣病の深い関係

【必読! 口と腸と生活習慣病の深い関係】

 少量で周囲の細菌等を巻き込み、健康に悪影響を及ぼす「キーストーン病原体」が口腔細菌との関連で注目されている。現在、次の4種類がそう呼ばれている。

 □ジンジバリス菌(歯周病原因菌)

 □クレブシエラ菌(肺炎桿菌)

 □ミュータンス菌(虫歯原因菌)

 □フソバクテリウム(歯周病原因菌)

 ジンジバリス菌、ミュータンス菌については前回までに説明したが、あとの2つもその恐ろしさについて説明したい。

 口腔内や腸管内に常在しているクレブシエラ菌は、日本名のとおり、肺炎の原因菌になる。通常は腸管内には定着しないが、腸内細菌のバランスが乱れると、クローン病(消化管の至るところに慢性炎症をきたす)や潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜に潰瘍やびらんなどの慢性的な炎症が起こる)の発症に関与している可能性が高いことが、慶応大学、早稲田大学、理化学研究所の共同研究グループによって2017年に発表された。

 また、フソバクテリウムは大腸がんの増悪化に関わっている可能性が高いこともわかっている。大腸がんの増殖と転移を促進しているのがフソバクテリウムである可能性はこれまで示唆されてきたが、さらにその仮説を後押しする研究が、横浜市立大学などの研究でわかってきた。

 大腸がん患者の患部組織と唾液を調べると、4割以上の患者でがん組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見した、と18年に発表。大腸がんは、同年胃がんを抜いて日本人のがんの罹患率トップになっている。これらのことからも、口腔細菌のケアの重要性は医学界全体で認めるところで、口腔細菌研究の第一人者である、鶴見大学歯学部探索歯学講座(神奈川県横浜市)の花田信弘教授=顔写真=は、「とくにこれらのキーストーン病原体の除去を意識することが肝心です」と話す。

 それでは、キーストーン病原体を除去し、口腔内と腸管内の細菌のバランスを整えるには、どうしたらいいのだろうか。

 花田教授は、歯みがきにもう一つプラスする清掃が望ましいと話す。

 「歯みがきだけでは、どんなにがんばっても9割までしか清掃できません。歯みがきだけでよかったのは、平均寿命が60歳で総入れ歯が当たり前だった時代まで。必ずもう1種類の方法で清掃してください」

 とくに、虫歯菌のミュータンス菌はバイオフィルムというネバネバの膜を作り、他の細菌と共生してしまう。これを毎日落とし、デンタルプラーク(歯垢)がつかないようにすることが大切だ。

 前回説明したが、ミュータンス菌の身体への影響や、歯の横面に起こる虫歯の危険性は歯周病菌同様侮れない。デンタルフロスやピック(最小サイズが望ましい)、「3DS」(スリーディーエス)と呼ばれる除菌治療などで、できるだけ除去しよう。もちろん、歯みがきをしないのは論外だが、忘れてしまった場合でも、その後きちんと磨き続ければ口腔細菌の環境は改善される。

 キーストーン病原体を完全に除去できる方法は、今のところ3DSだけだが、やや高額で保険が利かないのが難点だ。ただし検査や除菌等の1セットを1回やると、日常のケアは、歯みがき後にマウスピースに除菌剤を流し込んで5分はめるだけ。格段に楽になる。

 「将来的には保険適用を目指していますが、歯周病や虫歯が多い人、周術期の患者さんなどにはぜひやっていただきたいですね」(石井悦子)