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寒い時期の「ビタミンD」不足 糖尿病リスクに拍車 健康寿命UP術

【健康寿命UP術】

 暦の上では春だが、度重なる寒気が列島を覆う。日光にあたる時間が少ないと皮膚で産生されるビタミンDが不足して、大腸がんなどの病気につながる可能性があることを前回紹介した。ビタミンDは、細胞が正常に働くために欠かせない栄養素であり、不足すると生活習慣病による2型糖尿病(以下、糖尿病)にもなりやすいという。

 「血糖値をコントロールするインスリンは、膵(すい)臓のβ細胞から分泌されます。ビタミンDはβ細胞を保護したり、インスリン分泌を調整したりしているのです。ビタミンDは単なる栄養素ではなくホルモンのような役割を果たす重要な成分です。ビタミンDが不足しやすい冬場は、糖尿病が進行する恐れがあるので注意しましょう」

 こう説明するのは、国立国際医療研究センター疫学・予防研究部の溝上哲也部長。予防医学の研究などを長年行い、昨年には、同センターのHPで公開した「糖尿病リスク予測ツール」の開発に関わった。自分の体重や身長などの項目を入力すると、3年以内に糖尿病を発症するリスクがわかる仕組みだ。

 「冬場のビタミンD不足の状態で、乱れた食生活や運動不足の状態が続くと、糖尿病に拍車をかけます。糖尿病リスク予測ツールでリスクを知り、ご自身の生活習慣を見直すきっかけにしていただけばと思います」

 寒いと休みの日の外出を控えがち。また寒さしのぎで仕事の後に「熱燗で一杯」という人もいるだろう。アルコールは食べ物よりも肝臓での分解が優先されるため、飲酒後には一時的に血糖値が下がる傾向にある。ところが、溝上部長らの研究報告では、日本酒換算で1・5合以上飲んだ場合、飲酒後に顔が赤くなる人は、赤くならない人と比べて、ヘモグロビンA1cの値が高くなることが判明した。ヘモグロビンA1cは、1~3カ月の血糖値の状態を反映する検査である。

 「顔が赤くなる人は、アルコールの代謝産物である有害なアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が低く、アルコールによる障害を受けやすい。アセトアルデヒドによってβ細胞が傷つきインスリン分泌が低下する、あるいはインスリンが効きにくくなるようなことが起こり得るのです」

 寒さしのぎの一杯も、人によっては糖尿病を悪化させる。日頃から丼物やラーメンなど、炭水化物の多い食事をとっている人や、間食、甘い飲料を常用している人はなおさら。ビタミンD不足はそんな糖尿病に拍車をかける可能性がある。

 「冬場の日照不足は避けられないので、腹八分を心がけ、サケやキノコなどビタミンDを多く含む食材を取り入れるといいでしょう。運動不足もよくない。通勤で階段を使うなど、体を動かすことも考えましょう」

 寒い時期の糖尿病悪化に注意しよう。(安達純子)

 ■寒い時期の糖尿病予防

 □酒は1日あたり日本酒で1合、ビール500ml、焼酎(20度)135ml、ワイン240ml、ウイスキー60mlまでに心掛ける

 □早食いやドカ食い、間食、甘い飲料は控える

 □白米などの精製した穀類を、玄米、雑穀、麦などに置きかえる。

 □こまめに体重をチェックする。

 □野菜をたっぷり食べる

 □駅の階段の上り下りなど体をこまめに動かすようにする

 □日光に手をかざすなど、日光に当たる

 □サケやキノコなどビタミンDの含有量が多い食材を食べる