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慢性閉塞性肺疾患の重症化「ACO」防ぐには? 1週間以上続く風邪に要注意

【止まらない咳・治らない風邪】

 風邪を引き金とした長引く咳(せき)には、ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、別の病気が潜んで悪化する可能性があることを前回までに紹介した。風邪の長引く咳を侮ってはいけない。マスクや手洗い、うがい、さらにはインフルエンザのワクチン接種など予防に励むことがなにより。それでも、咳や痰(たん)が生じるようなり、「うつったかな?」と思う段階で、自宅近くの医療機関を受診した方が良い。

 「咳を甘く見てはいけません。咳の原因は肺や気管支以外にも、逆流性食道炎など別の臓器の病気によることもあります。咳はいわば体のSOSのサインともいえるのです。原因を調べて健康管理に役立てましょう」

 こう話すのは、日本医科大学呼吸ケアクリニック(東京都千代田区)の木田厚瑞所長。COPDやぜんそくなどの呼吸器疾患の診断・治療を数多く行っている。

 COPDは、肺の組織が壊れ、気管支の炎症や空気の通りが悪くなり、階段を上ったときなどの息切れ、呼吸困難、咳や痰の症状を特徴とする。早期段階では息切れ程度で、健康診断のエックス線検査でも肺の異常は見られない。この状態で風邪をひいて気管支の炎症が強くなると、咳や痰の症状が激しくなる。それを機に、気管支の炎症と閉塞が伴うぜんそくを合併することもあるからご用心。

 「近年、COPDとぜんそくが合併して重症化する『ACO(エイコ)』が世界的に注目されています。また、風邪を引き金に、COPDと気管支拡張症との合併にも注意が必要です」

 気管支は、気道から肺へ細かく枝分かれしている。細かい気管支で炎症が繰り返されると、気管支が壊れて広がってしまうのが気管支拡張症である。広がった気管支には、細菌などが増殖しやすく、さらに炎症を広げて気管支や肺を壊していく。この気管支拡張症とCOPDが合併していると、重症化しやすいそうだ。

 「ACOなどを防ぐには、COPD、ぜんそく、気管支拡張症は、初期の段階できちんと治療を受けることが重要になります。風邪をひきやすい人や、風邪の症状が1週間以上も長引くことが多い人は、医療機関を受診していただきたいと思います」

 師走は、過度なストレスや睡眠不足、暴飲暴食などで体調を崩しやすい時期。それを乗り越えるには、体調管理は欠かせない。忙しいからと医療機関の受診を後回しにしていると、体調不良が悪化する可能性があることを覚えておこう。

 「スマートフォンのアプリを活用して、血圧や体重などの基礎データや、咳や痰の症状などを細かく記録しておくと、医療機関を受診したときに診察がスムーズです。忙しい時期だからこそ、ご自身の健康カルテの作成は重要といえます。50歳以降の方は実践しましょう」

 長引く咳を撃退して、師走を乗り切ろう。(安達純子)=おわり