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大腿骨骨折、余命にも影響 高齢者は寝たきりの危険
高齢者が寝たきりになる原因の上位を占めているのが大腿(だいたい)骨の骨折だ。折れた骨自体はつながっても、治療中に筋力の低下や活動性の衰えなどが原因で寝たきりになったり、そこまでいかないとしても自立した生活ができなくなったりするケースは少なくない。特に80歳を超えると患者が急増する一方、治療後の生活の質(QOL)の改善は不十分で、骨折により余命が短くなるという調査もある。
このため原因となる骨の脆弱(ぜいじゃく)性を高める骨粗しょう症の早期発見と治療、転倒防止のための筋力トレーニングなどへの取り組みが進んでいる。その中で、より目標を絞り込んで骨折者への早期の治療と離床を目指した徹底したリハビリ、退院後2年間にわたるフォローによる活動性の回復と再骨折の防止に力点を置いた対策が英国で提唱されている。◇手術からリハビリまで
「必要とされるのは、早期かつ質の高い手術と、手術直後からの専門職の指導下でのリハビリ、そして専任の看護師らが務めるコーディネーターによる患者教育や筋力トレーニングの管理、かかりつけ医との連携などを実施できる『骨折リエゾンサービス』制度の創設だ」
こう強調するのは、元英国ロンドン大学(UCL)教授で、自身が2011年に立ち上げた「脆弱(ぜいじゃく)性骨折ネットワーク(FFN)」の事務局長、デビット・マーシュ医学博士(整形外科)だ。早急な対応が必要な背景には、80歳以上の高齢者が骨の脆弱性以外にも高血圧や糖尿病などさまざまな内科系疾患を併発しており、骨折やその後の長期的な治療によるストレスには耐えきれない可能性も低くないからだ。脆弱性骨折ネットワーク(FFN)事務局長のデビット・マーシュ博士
◇整形外科医以外も積極的関与
この点についてマーシュ博士は「骨折を診る整形外科だけでなく、内科各部門に精通した老年病の専門医や看護師、理学療法士なども治療やリハビリ計画に積極的に関与する必要がある」と指摘した。
ただ、整形外科の専門医がリハビリやその後の療養にまで目を配るのは人手や診療体制の点で難しい事情は、日本も英国も同じだ。そこでマーシュ博士が提唱したのが骨折リエゾンサービスだ。通常の受診か救急搬送かを問わず高齢の骨折患者を一括して登録し、登録された患者の治療経緯やリハビリの進行状況、その後の療養生活や再発防止のためのトレーニングへの参加状況までを、研修を受けた看護師らが一人ひとり把握し、必要に応じてかかりつけ医(英国では制度化されたホームドクター)と連携して指導に当たる。
「医師だけではなく、看護師や理学療法士、作業療法士らが集まるFFNの役割は大きい。この制度を導入するためには医療現場だけでなく、報酬制度やその予算措置などをどうするか、政治的な意志決定も重要になる」1/2ページ