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骨粗鬆症による圧迫骨折 早期診断で生活の質向上(産経新聞)

高齢化に伴い女性を中心に増加する「骨粗鬆(こつそしょう)症」。骨量が減少し、空洞化するため、背骨が押しつぶされる「圧迫骨折」が起きることも多い。治療を受けると多くの患者は治癒するが、約2割は激痛が持続する「遷延(せんえん)治癒」という状態になる。大阪市立大の研究グループはMRI(磁気共鳴画像装置)を使い、圧迫骨折の初期の段階で予測する方法を開発した。早期診断、治療を可能にし、患者の生活の質(QOL)を改善している。(坂口至徳)

 ◆2割に激痛

 背骨は24個の椎体といわれる骨の塊が柱のように縦に積み重なっている。骨粗鬆症による圧迫骨折は、この椎体の強度が弱まっていることから、尻もちなどちょっとした外圧でつぶれてしまうのが原因だ。通常はコルセットを腰に巻くなどの方法で治るが、約2割の患者は、骨折した部分が融合せず、不安定に動くことで神経を刺激するなどして「遷延治癒」という状態になり、激痛が走って身動きできない状態になる。また、痛みが出なくても変形したままの状態で融合して腰が曲がるなどの原因になることもある。

 従来は圧迫骨折と診断されてから6カ月前後の経過を観察したうえで、遷延治癒の確定診断をしていたが、その間、激しい痛みなどに見舞われ、QOLが著しく低下する患者もいた。そのため、予測により経過を見極め、早期に骨量を増す薬の投与や、骨を固める医療用セメントの注入手術などの治療に取り掛かることが求められていた。

 ◆空洞部分に血液

 大阪市立大学大学院医学研究科整形外科の高橋真治病院講師、星野雅俊講師らのチームは、X線による検査に加え、骨の破損状態がよく分かるMRIを初期の画像診断で使うことにした。65歳以上の圧迫骨折の患者153人を対象に、発症直後と1カ月後にMRI検査を行い、6カ月間経過を追跡した。

 その結果、遷延治癒の患者は30人と約2割を占めていた。また、発症直後の検査で、骨の広範囲の破損や、骨の空洞部分に血液がたまっているなどの状態が見られた患者のうち、63%は遷延治癒になっており、初期の段階で予測できることを突き止めた。

 こうした成果にもとづいた治療がすでに大阪市大病院で行われている。

 ◆手術翌日に改善

 大阪府在住の81歳の女性は圧迫骨折となり、1カ月後のMRI検査で、骨に血液がたまるなど遷延治癒の特徴的な画像が得られた。しかも、強い腰痛があり、5分以上座ることができなかった。そこで医療用セメントを破損箇所に注入して固定する手術を行ったところ、その翌日には痛みが改善し、歩行することもできるようになった。

 高橋病院講師は「痛みをこらえて過ごすことなく、早期に手術に着手できるので患者の負担はかなり軽減されます」と話す。

 同科の中村博亮教授は「MRIは性能が向上し、骨粗鬆症の診断に使われ始めています。圧迫骨折の経過予測もできるようになったことで、早期治療が必要な患者を選択でき、医療費の軽減にもつながります。強い痛みがあったら、MRI検査を受けることで、寝たきりではない真の健康長寿を目指してほしい」と話している。