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ぜんそく、あきらめないで 新薬や保険適用の手術…選択肢広がる
気道が狭くなり、激しいせき込みなどの発作を引き起こす「ぜんそく」。国内では約1千万人が罹(り)患(かん)しているとされ、昨年は1794人がぜんそくで亡くなった(平成29年人口動態統計)。発作は「仕方がない」と思われがちだが、適切な治療で、症状をコントロールできるという。(加納裕子)
バイオ製剤で改善
大阪府河内長野市の元小学校教諭、高原幸子さん(77)は40代後半でぜんそくと診断された。せきが止まらずに苦しみ、何度も救急車で運ばれた。入院は10回以上、長いときは1カ月以上に及んだことも。仕事への責任感から、退院したその足で出勤することもあったという。
その後、湿疹や胃腸炎にも苦しんだが、ぜんそくを含めこうした症状の原因が好酸球という炎症物質であることが判明。3年前から好酸球を減らすバイオ製剤を使い始め、発作や胃腸炎から解放された。現在は投薬治療を受けつつ、社交ダンスや押し花を楽しんでおり、「本当に元気になりました」とほほえむ。
ぜんそくの特徴は、発作がないときにも慢性的な炎症が続き、常に気道が狭くなっていること。夜間や早朝に症状が悪化するほか、風邪や気候の変化などでも発作が誘発される。
日本アレルギー学会理事長で近畿大学医学部付属病院の東田有智病院長(65)によると、治療は吸入ステロイド薬がメイン。さらに近年では、炎症物質に直接作用するバイオ製剤が相次いで開発され、高原さんのように症状がおさまる例も。さらに高周波電流で気道の壁の内部を加熱し、空気の通り道を広げる手術も保険適用となり、治療の選択肢が増えた。
医師の指導不可欠
平成27年にアレルギー疾患対策基本法が施行され、国はぜんそくを含むアレルギー疾患への対策を強化。現在は各都道府県が、治療や啓発を中心となって進める「アレルギー疾患医療拠点病院」の選定を進めており、大阪府は今年6月、近畿大学医学部付属病院など4カ所を指定した。
東田病院長によると、適切に吸入ステロイド薬を使うことで90%以上の患者が症状を抑え、炎症の悪化を防げる。そのためには医師が呼吸機能を正しく測り、合った薬を処方した上で、使い方をきちんと指導することが不可欠。地元に専門医がいない場合は、拠点病院でこうした初期の診療を行い、地元の病院に引き継いでいきたいという。