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【デキる人の健康学】高タンパク質ダイエット食と睡眠の関係(産経新聞)

肥満症の人は睡眠時無呼吸症候群を高率に合併するために、良い睡眠の質が保てないことが知られている。肥満症は2型糖尿病や癌の発症リスクも上昇させ中年期以降の生活の質を著しく損ねるので減量が必須である。しかし、減量のためのダイエット食で十分にタンパク質を摂取しないと、良い睡眠の質が保てないことが報告され話題を呼んでいる。

 米国パデュー大学栄養科学のウェイン・キャンベル教授らの研究グループは過体重か肥満の被験者44人を2群に分け、対照群には通常のタンパク質量(0.8g/体重)のダイエット食、高タンパク質摂取群には通常の約2倍のタンパク質量(1.5g/体重)のダイエット食を16週に渡って摂取してもらい、毎月、睡眠の質をピッツバーグ睡眠問診表(PSQI)で評価した。

 この問診表は睡眠時間、睡眠の連続性、睡眠潜時、日中の眠気の有無、睡眠効率、主観的評価や睡眠薬の使用の有無をスコア化したもので睡眠の質を数値化して評価できる。

 解析の結果、高タンパク質群の被験者は3ヶ月目と4ヶ月目に睡眠の質が向上していることが明らかとなった。被験者は主に牛肉、豚肉、大豆、豆類、乳蛋白からタンパク質を摂取したが、これらのタンパク質は睡眠の質を左右するセロトニン、メラトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の原料になるトリプトファンやチロシンなどのアミノ酸の供給源になるとキャンベル教授は考察する。

 しかし、高タンパク質ダイエット食ではタンパク質が増えた分の炭水化物の摂取量を抑えているので、低糖質が睡眠の質を良くした可能性も否定できない。以前のコラムでも夕食と睡眠の関係を紹介したが、質の良い睡眠のためには高タンパク質で低糖質の夕食が良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。