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【くらしナビ】腸内環境整える「スーパー大麦」 大腸の奥まで届き善玉菌を活性化(産経新聞)
おなかの調子を左右する腸内細菌は大腸の奧に行くほど多くなり、健康面への影響も高まっていく。大腸の奧を善玉菌が住みやすくすることが重要だ。善玉菌は糖類や食物繊維をエサとする。そこで大腸の奥まで到達する「難消化性でんぷん」を多く含むなど機能性の高い大麦に注目が集まっている。(谷口康雄)
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腸内細菌は胃酸、胆汁などの影響を受け、小腸の上部までは数が少なく、ほとんどが大腸に存在する。女性のがん死の第1位は大腸がんで、肛門の直前にある結腸、その手前のS字結腸で多く発症する。医学博士で消化器や機能性食品の研究を行っている帝京平成大学健康メディカル学部の松井輝明教授は、大腸の腸内環境を整えることが大切だとし、大腸の奧になるほど重要度を増すという。
「腸内細菌は肛門に近くなるほど多く存在し、腸内細菌の数と大腸がんの発症頻度は比例します。大腸の奧はアルカリ性になりやすく悪玉菌が優位となりますが、主要な善玉菌のビフィズス菌が住みやすい環境にすることが大切です」
乳酸菌は乳酸を作り、体に良い働きをする菌の総称。ビフィズス菌の1万分の1から100分の1ほどの数で、ビフィズス菌が生息しやすい環境にするなどの役割を担っている。善玉菌の大多数を占めるビフィズス菌は全身の生体調節作用に寄与する短鎖脂肪酸を産生し、このうち酢酸には強い殺菌作用がある。酸素があると生育できず、多くが大腸の奧に住む。
松井教授は、通常の大麦と比べ、水溶性食物繊維が2倍で、小腸では吸収されずに大腸に到達する難消化性でんぷんを4倍含むスーパー大麦を1日3回、食前に摂取する臨床試験を便秘傾向の男女を対象に行った。その結果、2週間で排便の量や回数の増加など整腸作用の改善がみられ、短鎖脂肪酸やビフィズス菌が増加した。
善玉と悪玉のどちらにも加勢する日和見菌も、炎症や肥満を抑える酪酸を増やすバクテロイデス、食物繊維の分解を促すプレボテラが増え、二次胆汁酸の産生を促進して肥満、がんの危険性を高めるクロストリジウムサブクラスターXIVaが減少した。
松井教授は「小腸では消化されないオリゴ糖は大腸の入り口付近に多い乳酸菌にほとんど食べられてしまいますが、短鎖脂肪酸が顕著に増えていることから、ビフィズス菌のエサとなる難消化性でんぷんなどの糖質や水溶性食物繊維が大腸の奧にまで届いていると考えられます」と説明する。
さらに松井教授は腸内細菌の分布状態(細菌叢(そう))が短期間で変化したことに注目する。「ひとたび細菌叢ができると、がっちりとスクラムを組み、なかなか変化しない。それがわずか2週間で動くことが分かりました。生きた菌を届けることも大切ですが、善玉菌が活性化しやすい環境を整備することが重要です」
繊維大手で医薬医療の分野も手がける帝人は、機能性食品の健康効果などに着目し、オーストラリア産スーパー大麦の輸入、食品の開発に乗り出している。ヘルス機能性食品プロジェクトリーダーの妹脊(いもせ)和男さんは「良い食材を取ることで健康を維持しようとする世界的な流れの中で、スーパーフードとしての大麦に着目しました。スーパー大麦は皮をむかなくても食べられ、歯応えがあり、香ばしい。かむほどに甘みが出る。さまざまな栄養素が総体として作用していることを重視して食品を開発し、食の在り方を提案したい」と意欲を語る。