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【デキる人の健康学】身体の若さを保つには幹細胞維持 適度な抗酸化が必要(産経新聞)

高齢期になって身体の若さを保つには、組織中に存在する幹細胞の数と機能を保つ必要がある。加齢とともにこの組織幹細胞の数が減り、機能が失われることが脳や骨髄などの臓器の老化につながると考えられる。年を取っていかに若さを保つかは、この組織幹細胞をいかに維持するかに依存しているともいえる。

 幹細胞の機能とは自分自身を複製する能力と様々な細胞に分化できる能力の2つの機能のことを示している。フィンランド、ヘルシンキ大学・分子神経学のリッカ・H・ヘメレイネン博士らの研究チームは幹細胞の機能維持にはミトコンドリアで産生され活性酸素が重要な役割を果たしている点に着眼した。

 ミトコンドリアは細胞の発電所に例えられ、酸素を消費してエネルギーを生み出す場所であるが、その副産物として反応性の高い活性酸素を産生してしまう。過剰な活性酸素は細胞を障害するが、少量の活性酸素は細胞内分子のシグナル伝達に必要とされる。

 博士らの研究チームはミトコンドリアの遺伝子が突然変異を繰り返す変異マウスの幹細胞を使って実験を行った。この変異マウスは貧血をきたすが、抗酸化剤を投与すると症状が改善したことから抗酸化剤が血液幹細胞の機能を改善できると推論した。

 実際にヘメレイネン博士が培養幹細胞に抗酸化剤を少量与えたところ、神経幹細胞も血液幹細胞や円位マウスから確率したiPS細胞も増殖と分化機能が回復した。しかし、驚いたことに更に沢山の抗酸化剤を投与したところ細胞はプログラム死を誘導して幹細胞は死んでしまった。

 これまでの研究から幹細胞のエネルギーは酸化的リン酸化でなく解糖系に依存していると考えられてきた。しかし、変異マウス由来の幹細胞は酸化的リン酸化に障害があるため、解糖系への依存がより強くなった状態と考えられた。

 抗酸化剤を少量使うことにより変異マウス由来幹細胞の解糖系への依存度が下がり、細胞増殖と分化機能を維持できたのである。しかし、大量の抗酸化剤は神経幹細胞に対する毒性が示されたのである。

 サプリメントとして抗酸化物質は一般的となっているが、この量には至適濃度があるかも知れない。今回のモデルはミトコンドリアに変異をもたらすという特異的なモデルであるために、一般化は難しいかもしれないが、抗酸化サプリメントの至適濃度に関しては再考を要するかも知れない。やはり、食事による適量の抗酸化物質の摂取が若返りに最適化されているのかも知れない。