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【デキる人の健康学】定期的にランニングで癌細胞抑制(産経新聞)
ランニングブームが到来し、各地で開催されるマラソン大会ではタイムを競うアスリートから健康増進を目指す老若男女まで各人が様々な想いで走っている。
ランニングにより2型糖尿病を発症した人は明らかに糖尿病のコントロールが良くなる、メタボリック症候群の人はお腹周りのシェイプアップや減量に効果を上げているが、これまでの研究でランニングには癌の発病予防効果や癌細胞の増殖抑制効果があることも報告されている。
しかし、癌病巣を縮小させる効果が癌細胞自身が死滅するためなのか免疫系の細胞により排除されるためなのかに関しては良く理解されていなかった。
コペンハーゲン大学健康科学科のライン・ペダーセン博士らの研究チームはナチュラルキラー細胞(NK細胞)と呼ばれるリンパ球に注目した。NK細胞は警官のように体の中をパトロールしていてガン細胞やウイルスに感染した細胞を発見するとその細胞に傷害を与え溶解することからキラー細胞と呼ばれている。
研究チームがガン細胞をマウスに移植すると、移植前に4週間ランニングさせたマウスの腫瘍のサイズは運動をしなかった対照群のマウスの腫瘍サイズの半分以下に抑制されていることが判明した。縮小した癌組織を顕微鏡で観察するとランニングしたマウスの組織には多数のNK細胞が観察された。
一方で、血液中の成分を分析すると運動刺激により分泌促進されたアドレナリンがNK細胞を血液中に遊走させ、更に運動刺激で筋肉細胞から産生されたIL-6と呼ばれるサイトカインがNK細胞を癌組織に浸潤させて癌細胞を死滅させていることが分かった。これからは癌を予防するのみならず、癌の自然治癒のためにも定期的にランニングすることがお勧めだ。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。