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医療と福祉の資格に共通の基礎課程も 厚労省が検討本部を立ち上げ(福祉新聞)
厚生労働省は15日、高齢者や障害者などの生活支援に関連し、地域内で支え合う「地域共生社会」の実現に向けて省内幹部による検討本部を立ち上げた。住民の互助活動を後押ししつつ、一方で包括的な相談体制の構築を目指す。並行して個別の福祉制度や専門人材の養成を見直す。2017年の介護保険法改正、18年の生活困窮者自立支援法改正などを視野に入れ、20年代初頭に全面展開することを目指す。
同日発足した「我が事・丸ごと地域共生社会実現本部」で、本部長の塩崎恭久・厚労大臣は地域共生社会について「今後の福祉改革の基本コンセプトと位置付け、制度改革や法改正に生かす」とし、3テーマに分かれて検討するよう指示した。
一つ目は「地域づくり」で、2層に整理し考える。第1層は小中学校区単位で住民組織が地域課題を把握し、助け合いで解決し、さらには公的機関につなぐ仕組みをつくる。
地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生・児童委員などをその仕組みづくりの担い手と想定。法改正によりすべての社会福祉法人の責務となった「地域の公益的な活動」とも連動させる。
第2層は市町村単位の包括的な相談体制だ。新たな相談窓口は設けず、既存の窓口で受けた相談を適切な機関に振り分ける専門人材を明確に位置付ける。困りごとが制度の狭間に落ちたまま放置されないようにする。
これら二つの層を他人事でなく「我が事」と捉えて構築するため、16年度から4年程度モデル事業を行う。「16年度は26の県・市町村で始まる」(社会・援護局地域福祉課)という。介護保険の地域支援事業(市町村事業)も、より効果的に活用できるよう財源確保策を含めて見直す。
■福祉の一体的提供
第2のテーマは「公的なサービスの総合化」だ。介護と保育、障害者ケアなど複数の福祉サービスを一つの施設で一体的に提供できる仕組みをつくる。例えば介護職員として採用された人が同じ施設内で行う保育や障害者ケアにも携われるよう、兼務の条件や基準緩和の幅を検討する。
障害福祉サービスの基準を満たしていない介護保険事業所でも市町村が認めれば「基準該当サービス」として障害福祉サービスを提供できる現行の仕組みも、より活用しやすくなるよう改善する。介護報酬、障害福祉サービスの報酬の18年度改定がカギになる。
■人材養成の見直し
第3のテーマは専門人材の養成の見直し。医療や福祉の資格に共通の基礎課程を設けたり(21年度開始を目指す)、福祉系有資格者が保育士を取得しやすくなるよう試験科目などを一部免除したりすることを検討する。
第2、第3のテーマが「丸ごと」の意味するところで、厚労省は複数の部局にまたがる壮大な改革に乗り出すことになる。
《解説》
「地域共生社会」に込められたメッセージは、「まずは住民同士で生活課題を見つけて解決を図り、それが困難な場合は、より柔軟な姿に衣替えした公的な福祉サービスを使ってほしい」ということだ。その実現に向けて検討する三つのテーマはかねて議論となってきたもので、平たく言えば資格を持った専門職か非専門職かを問わず、いかに人材の有効活用を図るかということだ。人口減少、人材確保難がさらに進む以上、これまでの人材養成、人員配置のルールを緩和せざるを得ないのだろう。問題は、厚労省が練る緩和策を市町村行政がどう受け止めるかだ。市町村が担う「地域づくり」に全国共通の正解やモデルはない。三つのテーマの議論の過程に、市町村の実務者の視点を入れることが欠かせない。