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がん治療、認知症の悪化リスク考慮を-厚労省・協議会で委員が指摘(医療介護CBニュース)
厚生労働省の「がん対策推進協議会」は9月30日、来年6月に施行予定の第3期のがん対策推進基本計画(基本計画)の策定に向け、世代ごとの対策などを議論した。認知症の高齢者に対するがん治療について、委員から認知症の悪化リスクを十分考慮して取り組むべきとの指摘があった。【松村秀士】
がん対策については、同協議会の委員から、小児や、思春期・若年成人のいわゆる「AYA世代」から高齢者といった各世代に応じた取り組みの必要性が指摘されていた。
こうした声があることから、同日に開かれた会合では、認知症を発症する高齢者やAYA世代などのがん対策を進めるため、専門家からヒアリングした。
国立がん研究センター(国がん)東病院精神腫瘍科長の小川朝生参考人は、認知機能障害とがん治療の関係などについて説明した。小川氏によると、認知症の高齢者らががんの手術や薬物治療を受けるとせん妄を発症し、認知症の悪化リスクが高まる恐れがある。また、現状では、がん診療連携拠点病院(拠点病院)でも認知症の人への診療やケアに関する知識や情報が不足しているという。
その上で、求められる対策として、拠点病院などでの認知症やせん妄に関する基本的な知識や診療技術の早急な普及・啓発を挙げた。また、がんに伴う症状や治療による副作用、後遺症の軽減などを目指す「支持療法」のプログラムも確立すべきだとした。
意見交換では、中川恵一委員(東大医学部附属病院放射線科准教授)が認知症高齢者へのがん治療について、「若年者と同じように、すべてを積極的にすればいいというわけでは必ずしもない」とし、がん治療の効果とせん妄による認知症の悪化リスクとのバランスを考えながら進めるべきとの考えを示した。このほか、「検診も含めて、高齢者に対するがん治療は非常に大きな問題」、「75歳以上を対象にした標準治療についてエビデンスをつくることが大切」といった意見も出た。
■AYA世代がんの診療拠点整備を求める声も
また、2015年度の厚生労働科学研究に携わった国がん中央病院外来医長の清水千佳子参考人は、AYA世代の診療件数が多い拠点病院を中心に、その世代を対象にしたがんの診療拠点を整備すべきだと提案。その体制づくりに必要な予算措置や、地域でAYA世代のがん診療をする医療者への教育や人材育成なども課題に挙げた。