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iPS角膜移植 阪大教授「ドナー不足解消につなげたい」

大阪大吹田キャンパス(大阪府吹田市)での記者会見。西田教授は緊張感を漂わせた表情で、こう切り出した。

 西田教授らがシートを移植したのは、「角膜上皮幹細胞疲弊症」の40代の女性患者。外傷や病気が原因で、角膜の最も外側部分で幹細胞が失われ、角膜が濁って視力が低下する疾患で、現在の有効な治療法は、ドナーによる角膜移植しかない。ただ、その場合でも、効果を維持するのが難しいとされており、「既存の治療法では、角膜の病気の中で最も治しにくい」という。

 移植手術を受けた女性は、最も症状が重い「ステージIII」で、ほとんど視力がない状態だった。シートを移植した左目の術後の経過は良好で、現在は退院。視力の数値などを公表しなかったが、西田教授は「ほとんど見えなかったのが、日常生活に支障がない程度には回復した。喜んでおられると聞いている」と表情を緩ませる場面もあった。

 これまで、唯一の治療法だった角膜移植は、ドナー不足や、移植による拒絶反応が起きやすいなどの課題がある。角膜に他人の角膜などを移植した場合、拒絶反応は1年以内に起こることが多い。