介護・医療関連ニュース
-
iPS細胞から網膜シートを自動培養 世界初 日立製作所と理化学研究所
日立製作所と理化学研究所は14日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から網膜色素上皮細胞シートを作製する自動培養に世界で初めて成功したと発表した。同シートは目の難病の「加齢黄斑変性」治療の臨床研究で移植手術に使われている。自動培養が実用化されれば、治療法が確立した際にシートの安定供給が見込め、再生医療の普及に役立つと考えられる。
加齢黄斑変性治療の臨床研究は2014年9月、理研生命機能科学研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーらのグループが、iPS細胞を使った初めての治療として女性患者にシートを移植した。移植2年後の経過が良好であると報告されている。
有効性や安全性が確認されると一般の医療として認められる。治療の臨床研究が進む一方、移植するシートの製造は、高度な技術を要する▽細胞液を頻繁に交換する必要がある▽培養施設が限られている――などの理由で量産化が難しかった。
日立は今回、外部と完全に遮断し無菌状態で培養できる装置や、網膜組織を培養する専用容器を開発。iPS細胞の培養経験が豊富な理研のノウハウも取り入れ、熟練技術者による手作りとほぼ同じ期間で、同品質のシートを作製することに成功した。
開発した装置は研究段階で、実用化は未定という。日立と理研は「医療用細胞の安定的な量産化を可能にし、再生医療を身近な医療に導く一歩となる」としている。
成果は13日付の米科学誌プロスワン(電子版)に掲載された。【鳥井真平】